【vol.27】小さいポアサイズの固定相を使用した場合のペプチド精製効率に対する流速の影響について

ペプチドブログvol27

April 6, 2020
Elizabeth Denton

 

以前フラッシュクロマトグラフィーの精製効率に流速がどのように影響するかを評価しました。しかし、移動相の流速が高いと、ペプチドの溶出が相対的に著しく遅くなることがわかりました。私は、圧力が高くなることで(流速が高くなることで)化合物が孔の中に入り込み、固定相との相互作用が増大し、保持が長くなったのではないかと推測しました。

 

粒子径 とポアサイズが分離能と精製効率に影響を与えることは分かっていますが、異なる固定相で流速がどのような影響があるのでしょうか?

 

今回の投稿では、粒子径を少し大きくしてポアサイズをかなり小さくした逆相固定相カラムを用いて、いくつかの流速で検討し、影響について評価していきます。

 

前回の実験では、Biotage® SNAP Bio C18 カートリッジ*を用いて両親媒性の 18 アミノ酸ペプチドを精製しました。今回の投稿では、SNAP Ultra C18 カートリッジ*2を使ってその実験を繰り返してみます。これらのカートリッジは似ていますが、いくつかの重要な違いがあります(表1)。

*現在、Biotage SNAP Bio C18 は Biotage® Sfär Bio C18 Duo 300 Å 20 μm へ切り替わっております。リンク:https://www.biotage.co.jp/products_top/peptide-synthesis-purification/sfar_bio/
*2現在、Biotage SNAP Ultra C18 は Biotage® Sfär C18 Duo 100 Å 30 μm へ切り替わっております。リンク:https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/sfar-c18/

カートリッジ名 粒子径 ポアサイズ 10gでのカラム容量
SNAP Ultra C18 30 μm 100Å 15 mL
SNAP Bio C18 20 μm 300Å 17 mL

表 1.本実験で使用したカートリッジの比較データ。

以前、この 2つのカートリッジの精製効率を比較したことがありますが、その時は 1つの流速で比較しただけでした。最初の流速の検討が終わった後、私は SNAP Ultra C18 カートリッジでも同じように大きな効果が得られるのではないかと考え始めました。この実験では、300μL の DMSO に溶解した約 50mg のペプチドをあらかじめ平衡化した SNAP Ultra C18 カートリッジにロードし、12、25、50mL/min の流速で 20~70%MeCN へのグラジエントを行いました(図1)。

SNAP Bio C18、SNAP Ultra C18

図 1: SNAP Bio C18(左)、SNAP Ultra C18(右)カートリッジを使用した 18A の精製結果。精製は、同一のグラジエントを用い、流速は 12 mL / min(上)、25 mL / min(中)、50 mL / min(下)で実施しました。

簡単に参照できるように SNAP Bio と Ultra C18 のクロマトグラムを表示しました。最初に気づいたことは、SNAP Ultra C18 カートリッジでは、特に低流速においてベースラインの変動が大幅に増加していました。しかし、SNAP Bio C18 カートリッジと同様に、ペースラインの変動は流速が高くなるほど減少し、50 mL / min では実質的に解消されました。

 

最も注目すべきは、大きな変化があった分離能です。このペプチドのバッチで他の検証で精製作業をしたことがありますが、図2のように早い溶出時間に不純物ピークがあることが分かっています。最も遅い流速では、そのピークがある程度分離されて溶出したとすると、ある種の納得いきます。しかし、流速を上げると、この不純物の分解能が低下し、生成物のピークに完全に吸収されてしまい、最終的な純度が下がることになります。これは事実上研究者の時間を浪費することになります。

SNAP Bio C18カートリッジを使用した100 mgの18Aの精製

図 2: SNAP Bio C18 カートリッジを使用した 100 mg の 18A の精製。この精製では、先行する不純物(緑色のピーク)がはっきり確認できます。

分離効率を見ると、SNAP Ultra C18 を用いた精製は、SNAP Bio C18 で行った場合よりも著しく精製効率が悪いことが明らかになりました(表2)。最も重要なことは、流速を上げると見かけの理論段数が劇的に減少し、精製効率が損なわれることです。低分子精製用の逆相精製カートリッジを使用する場合、最初の試みで精製が実際に成功したことを確認するために、より遅いグラジエントを実行する方が時間はかかりますが、精製の確実性は上がります。

流量(mL/min) 保持量(mL) ピーク半値幅(mL) 理論段数/カラム 理論段数/m
12 145.5 5.5 3,877 70,493
25 146 13.5 648 11,781
50 157 22 282 5,130

表 2: リニアグラジェントによるペプチド精製における見かけの理論段数の比較(流速の違い)。

通常、精製時間の短縮になるため、流速を高くすることをお勧めしますが、この時点で難しい判断になります。SNAP Ultra C18 は粒子が大きくポアサイズが小さいため、カートリッジの有効表面積(負荷容量に比例)が増え、インジェクション回数が減り、より小さなカートリッジ(溶媒消費量が少ない)を使用できる可能性があります。しかし、SNAP Bio C18 で確認されたカラム効率と全体的な精製度の向上は、私は SNAP Bio C18 を選択する決め手になりました。1回だけインジェクションして最終的に純度の低い化合物が得られるよりは、2回注入してペプチドを高純度に精製する方が良いと思っています。

 

固定相と流速の組み合わせの違いは、精製にどのような影響を与えたのでしょうか。

 

フラッシュクロマトグラフィーは、ペプチドワークフロー全体に影響を与え、最終製品として提供される化合物の数を増加させることが可能かについては、リンク を参照してください。

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