【vol.6】どのようにしてペプチド合成のレジンを選ぶのだろうか{パート1}

Biotage Japan ペプチドブログ vol.6

November 8, 2019
Elizabeth Denton

 

レジンは以前ポリスチレン系の樹脂タイプのみ取り扱っていました。現在では、C末端の機能性を選択(Rink Amide:C末端がアミド、Wang:C末端がカルボン酸)でき、レジンを構成するポリマーなども幅広い種類の中から選択することができます。

 

すべてのレジンに共通するものが1つあり、それは反応部位のロード量です。本稿では、レジンにおける重要なこのロード量が、ペプチド合成にどのような影響を及ぼすかについて、私の経験をお伝えします。

 

固相ペプチド合成法の成否は多くのファクターが関与します。重要な影響があるのは、ペプチド合成で使用されるレジンです。私にとって、一つの重要な要点は、レジンの反応部位を表す高ローディング量(反応部位が多い)と低ローディング量(反応部位が少ない)での選択です。

 

私はペプチド合成において高ローディング量のレジンを使用する魅力的な理由をいくつか考えることができます。まず、最初の理由として、より大きいスケールでペプチド合成を実施する場合です-レジン量に対してペプチドを多く生成できると考えられます。しかし、この条件でペプチド合成した場合はどうなるのだろうか。ペプチドの純度は低くなり、精製に大きな労力が必要になるのではないか?

 

レジンローディング量を選択することで合成条件の最適化を議論する論文を発見しました。私は以前から低ローディング量のレジンを使っていたので、レジンのローディング量に対して同一条件での比較を行おうと思いました。

 

私は18Aと呼ばれるペプチドを合成することにしました。このペプチドは、18個のアミノ酸からなる両親媒性ペプチドで、ヘリックス構造をもっています。低ローディング量のレジンを選択するための主な議題は、ペプチドを伸長させている間に近くとの伸長ペプチド鎖間との干渉・相互作用を防ぐことです。したがって、長いペプチドはレジンのローディング量による影響をより明らかにすると考えました。

 

私は、Biotage® Initiator+Alstra™を用いて、最初にローディング量0.7mmol/gで、Fmoc-Gly-OHが導入されたポリスチレンベースのFmoc-Gly-Wang resinを用いて18Aを合成しました。合成には標準的なカップリング試薬であるDIC/Oxymaをシングルカップリングで行い、Fmoc脱保護(いずれも室温)を2回実施する条件を用いました。0.7mmol/gのローディング量は、とくにポリスチレン系レジンでは比較的高い程度になりますが、一般的なレジンでは、ローディング量が高いことは間違いありません。最初のアミノ酸を導入したプレロードレジンと呼ばれるものを用いることにより、Wangレジンにアミノ酸を導入する操作を排除できたため、ペプチド合成の効率に進めることができました。

 

その結果、目的のペプチドはメインピークに含まれていますが、副生成物がいくつも存在し、図1のピーク積分から租ペプチドの総合的な純度は約67%になることが分かりました。これは想定よりも悪い結果になりました。

01_f1

図 1:高ローディング量のポリスチレンレジンで合成した18残基の両親媒性ペプチド、18Aの分析HPLCクロマトグラム。

そこで、私は同条件になるようにBiotage Initiator+Alstra、全く同じカップリング条件とFmoc脱保護を用いて18Aを合成しました。今回は、グリシンをあらかじめ導入したFmoc-Gly-Wangポリスチレンレジンを用いて、ローディング量は前回の約半分程度である0.33mmol/gになりました。このローディング量は、私が大学院生時に使用したレジンのローディング量を思い出させます。しかし、私は様々なレジンを見てきましたが、これよりもローディング量が少ないレジンを用いて研究を行ってこともありました。

 

目的のペプチドは分析用HPLCクロマトグラムのメインピークに含まれています。今回の結果から、ローディング量を下げることで粗ペプチドの純度は約89%に増加しました!前回の合成よりも純度が改善しました。

02_f2

図 2: 低ローディング量のポリスチレンレジンで合成した18残基の両親媒性ペプチド、18Aの分析HPLCクロマトグラム。

18Aペプチドは比較的簡単に合成できますが、相対的にレジンのローディング量を比較すると、この値が租ペプチドの純度に大きな影響を明確に与えることがわかり、合成結果によってはその後の処理や精製時間に大きな労力を必要することを示唆しています。レジンのローディング量による影響は、ペプチド鎖の長さが長くなるにつれてより拡大する可能性が高いと考えられます。したがって、もし20残基から80残基の長いペプチドを合成する場合は、低ローディング量のポリスチレンレジンの使用を推奨します。

レジンのローディング量を変更し、ペプチド合成における純度や収量を改善したことはありますか?

日本語化:2020年9月
ウェブのみ一部修正:2024年4月
PDFファイルダウンロード(350KB, 2020年9月)

おすすめブログ»