【vol.22】 グラジエント溶出がアイソクラティック溶出より優れているのは どのような場合か?

有機化学ブログ vol.22

March 30, 2022
Bob Bickler

 

グラジエント溶出かアイソクラティック溶出か、それが問題です。フラッシュクロマトグラフィーでは、反応混合物や天然物抽出物を分離するためにこれらのオプションがあり、これがこの記事の焦点です。

 

この用語に馴染みのない方のために説明すると、アイソクラティック溶出 とは、精製に使用する移動相溶媒のブレンドが、クロマトグラフィー中、弱溶媒(例:ヘキサン)と強溶媒(例:酢酸エチル)を一定の比率に維持することを指します。フラッシュクロマトグラフィーで 薄層クロマトグラフィー(TLC) を基準として使用する場合、アイソクラティック精製ではTLCで使用したものと同じ溶媒比を使用します。

 

グラジエント溶出 では、精製終了時の溶媒のブレンドが開始時と異なります。一般的に、グラジエント法は弱溶媒の割合が高い移動相から始まり、強溶媒の割合が高い移動相で終了します。

 

実はグラジエントにはリニアとステップの2種類があり、それぞれ利点があるので後ほど説明します。

 

アイソクラティック溶出

前述のように、アイソクラティックフラッシュクロマトグラフィーは、一定の溶媒混合で試料成分を分離・溶出します。アイソクラティック溶出はシンプルですが、いくつかの欠点があり、最大の欠点はバンド幅が広がることです。粗サンプルがカラム内を移動する際、カラム媒体(固定相)への親和性が高い化合物は、移動相への親和性が高い化合物よりもゆっくりと溶出されます。化合物は濃縮されたバンドとしてカラムを移動するため、化合物がカラムから溶出するまでの時間が長いほど、より多くの溶媒が必要となり、化合物の溶出量も増加します。これは溶出バンド幅の拡大として見られる希釈効果と捉えてください(図1)。

アイソクラティック溶出

図 1. アイソクラティックフラッシュクロマトグラフィー。溶出までに多くの溶媒を必要とする化合物は、ここで示されているような幅広い溶出バンドがピークとして見られます。

グラジエント溶出

精製中に移動相の溶出強度を変化させることで、後から溶出する化合物の移動相への溶解度が高まり、溶出が促進されます。その際、溶出バンドがシャープになります。濃度が高くなり、バンド幅が狭くなるためです。さらに、溶出化合物間の分離が向上し、高純度なフラクションが得られることも少なくありません。

 

よく使われるグラジエントには、リニアグラジエントとステップグラジエントの2種類があります。リニアグラジェントでは、溶媒の比率が直線的に増加するため、固定相との親和性が高い化合物の溶出が促進され、分離が向上します(図2)。

グラジエント溶出

図 2. リニアグラジエント溶出。溶出溶媒の強度を上げると、化合物の溶出バンドが減少し、精製効率が向上します。

一方、ステップグラジェントは、一連のアイソクラティックステップ(階段をイメージしてください)で構築されています。連続する各ステップは、強溶媒の比率が高くなるように溶媒比率を変えています(図3)。ステップグラジエントの考え方は、個々の化合物の溶出を可能な限りコントロールし、化合物間の分離を最大にすることです。また、ステップグラジエントには、精製に必要な溶媒の量を減らすという利点もあります。

ステップグラジェント

図 3. 一連の個別ステップにより、バンドの広がりを最小限に抑えながら、化合物の分離を向上させ、最大化させることができます。

つまり、グラジエント溶出は、リニアであれステップであれ、アイソクラティック溶出に比べてフラッシュクロマトグラフィーの効率と性能を向上させるということがわかります。

 

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