九州大学薬物分子設計学平井研究室 寄立先生

UV や RI での検出が難しい糖鎖の精製に
Biotage® Selekt-ELSD が大活躍

精製効率が上がることで学生が積極的に実験に取り組むようになった

九州大学薬物分子設計学平井研究室 寄立先生
九州大学薬物分子設計学平井研究室 寄立先生

九州大学薬物分子設計学研究室平井研では、生物活性分子そのものの合成研究だけでなく、有機化学・生物学の知見を利活用して新しい生物活性分子を創り出す研究に取り組まれています。今回は、超高速フラッシュ自動精製装置 Biotage® Selekt に ELSD(蒸発光散乱検出器)を接続し、LC 用分取カラムを用いて合成分子の精製を行っておられる寄立麻琴先生、学生の工藤のゆりさん、前田梨紗さん、三浦大志さんにお話を伺いました。

― 取り組まれている研究テーマについて教えていただけますか。

寄立先生 :
私たちは糖鎖を模倣した化合物を合成研究しています。通常、糖鎖はグリコシド結合で連結しています。糖鎖は生体内では多糖や糖脂質として存在しますが、グリコシド結合は酵素で切断されてしまうため、生命現象の様々な場面における糖鎖の重要な役割の解明の難しさがそこにあります。そこで、私たちは酵素で切れてしまうグリコシド結合に含まれる酸素原子を炭素に置き換えた C-グリコシドなどの多数の糖鎖アナログを合成しています。

ところが、今私たちが合成している糖鎖アナログは中間体や脱保護後の段階で UV 吸収がないものが多く、精製に困っていました。

◆RI で検出しづらい糖脂質化合物が増えて精製に費やす時間が膨大に。
ELSD と Selekt の導入で検出可能&短時間で精製ができるようになった。

― それで今回は検出器に ELSD を採用されたのですね。UV 検出できない化合物はこれまでどのように精製されていたのでしょうか?

九州大学薬物分子設計学平井研究室 寄立先生

寄立先生 :
RI 検出器を使って分取したり、全部フラクションを分取して TLC で確認ということをしていました。最近では、RI で検出しづらい糖脂質化合物などが増えてきており、学生たちも精製に費やす時間が増えて困っていました。

― 他社からも ELSD 付のフラッシュ精製システムは販売されていますが、導入の決め手は何でしょうか?

寄立先生 :
各社それぞれいいところがあって、バイオタージの Selekt はちょうど中間にあり使い勝手がいいと感じました。圧力や流量も必要な範囲をカバーしていて、汎用性が高いという点が導入のポイントでした。

三浦さん :
他社のシステムと比べて、高圧対応で圧倒的に早く精製できるのが本当にいいなと感じました。

◆アセトンを使っても UV ベースライン補正機能でピーク検出。
PDA で化合物の吸収スペクトルが見れるので化合物の特性理解に貢献。

― システムを導入してからのメリット、効果などはいかがですか?

工藤さん :
ELSD で化合物が検出できるので、精製がとても楽になりました。Selekt で精製すると早く終わるので、授業の隙間時間に精製終わらせてから行こうかな、と実験に対して積極的に取り組むようになりました。

九州大学薬物分子設計学平井研究室 寄立先生

前田さん :
数十mgのサンプルもあれば、15g程度の大きいスケールで精製することもあるのですが、15gのサンプルになっても 50gのカラムカートリッジを2連結して 30分で精製が終わるので、とても時短効果高いと感じています。

また、アセトンを溶媒で使うことがあるのですが、UV ベースライン補正機能があり、化合物のピークがきれいに見える点も重宝しています。

RI 検出で精製した時は不純物のピークが隠れて見えにくかったことも多かったのですが、バイオタージの ELSD はちょっとした不純物もきれいに検出できるので助かっています。

寄立先生 :
蛍光分子を扱うことがあるので、PDA の機能も重宝しています。各ピークの吸収スペクトルを見ることで化合物の吸収極大が分かるので、その化合物の特性の理解にも役立っています。

◆RI でも検出できない糖脂質で精製に費やす時間が膨大に。
ELSD と Selekt の導入で検出可能&短時間で精製ができるようになった。

九州大学薬物分子設計学平井研究室 寄立先生
分取 LC カラムを接続した Selekt-ELSD

― 弊社のフラッシュ精製装置 Selekt に LC 用の分取カラムを接続して精製することもあると伺いました。どのような場面で使われているのでしょうか? 使い方や分取 LC との違いなど感じたことがあればぜひお願いします。

寄立先生 :
ジアステレオマーの分離や高い純度が求められるアッセイ前段階で LC 用の分取カラムを使用します。アッセイ段階での HILIC での精製は難易度が高くテクニックも求められるので、その前段階でシリカゲルを使って純度を上げる方が楽です。最後の一つ前のステップで純度を最大化させることがとても重要です。

操作面においては、分取 LC と違ってシンプルな点がいいですね。例えば、LC システムだと検出器などユニットごとに電源を ON にしないといけないのですが、Selekt だと装置の電源一つで完結します。

グラジエントシーケンスを組むのもタッチパネルで直感的にできるのでとても楽です。分取カラムを使って綺麗に化合物を分けたいけど、簡単な装置を使いたいという方に Selekt はピッタリな精製システムですね。自動フラクションコレクターも付いていますので、フラッシュ精製のように LC 分取できるのが利点と思います。

ただし、一般的な 5ミクロンのシリカゲル HPLC カラムでは圧力が 3MPa を超えてしまうので Selekt で使用するカラムの選択には注意が必要です。

工藤さん :
これまで RI 検出で LC 分取精製していた時はベースラインがなかなか安定せず、コンディショニングにすごく時間がかかっていました。Selekt-ELSD を使った LC 分取カラムでの精製は、ベースラインがすぐに安定するので、実験時間の時短と溶媒使用量の節約ができて助かっています。

― これまで多く苦労されていたことが、バイオタージのシステムで解放されたということですね。反対に、要望などがありましたら教えてください。

寄立先生 :
全分取モードで分取中でもフラクションの容量が変更できるといいなと思っています。あとは、他社にある機能なのですが、開始から1CV までを廃液に流すドレインタイムの機能が欲しいですね。全分取の時に、何も出ない 1CV 分を余分に回収することになるので。保持時間がわかっている場合、もう少し長くドレインタイムを取ることで試験管を洗浄する手間をさらに減らすことができます。

九州大学薬物分子設計学平井研究室 寄立先生

三浦さん :
ラックの自動認識機能はとてもありがたい機能なのですが、認識機能の精度が甘いので厳しくしてほしいです。ラックが微妙にずれていても認識されてしまうので、ラックがずれてフラクションノズルから出る液がこぼれていることがあります。

工藤さん :
QR コードでの管理機能は便利なので使っているのですが、登録が1本しかできないので、カラムカートリッジを連結して使う時に困っています。
カラムを連結させて精製することが多いので、2本以上登録できると助かります。

― 貴重なご意見ありがとうございました。今後ともバイオタージ製品をよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中ありがとうございました。

インタビュー実施:2022年11月
PDFファイルダウンロード(990KB)

導入製品

超高速フラッシュ精製システム
Biotage® Selekt

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/selekt/

蒸発光散乱検出器
Biotage® ELSD-A120

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/selektelsd/

利用機関

九州大学大学院薬学研究院薬物分子設計学分野
病院キャンパス
九州大学薬物分子設計学平井研究室 寄立先生

医療系学部が同一キャンパス内に位置する病院キャンパスでは、チーム医療や創薬の連携研究が実践できる最適な環境が整備されています。さらに九大薬独自の人と地球に優しい「グリーンファルマ研究」を推進するための創薬拠点の形成が加速化しています。