群馬大学 大学院医学系研究科 教育研究支援センター 共同利用機器部門

質量分析計を用いた脂質・たんぱく質分析の前処理に
加圧マニホールド「PRESSURE+48」と
「PRESSURE+96」を活用

バキュームマニホールドから加圧マニホールドへ

群馬大学 大学院医学系研究科 教育研究支援センター 共同利用機器部門
群馬大学 大学院医学系研究科 教育研究支援センター 共同利用機器部門

群馬大学 大学院医学系研究科・教育研究支援センター 共同利用機器部門では、サンプル前処理も含めた分析依頼を受け付けています。多数のサンプルを同時に処理するため、「PRESSURE+48」と「PRESSURE+96」を導入されました。従来のバキュームマニホールドと加圧式マニホールドの違いについて、同部門で依頼分析を担当する准教授の大日方英さんと技術専門職員の平野瞳子さんにお話しを伺いました。

― 初めに共同利用機器部門の概要についてお聞かせください。

大日方先生 :
共同利用機器部門では、学内の医学系の研究室が共同で使うための機器の管理を行っています。中心は分析機器で、60台以上の機器のメンテナンスや使用法の説明、機器についての学内向けのテクニカル・セミナーの開催などを行っています。

平野技官 :
機器の管理だけでなく、研究者のみなさんが自身で操作するのが難しい機器については、前処理も含めてサンプルを預かって分析する分析依頼も受けています。

群馬大学 大学院医学系研究科 教育研究支援センター 共同利用機器部門
大日方 英 准教授

◆質量分析成功の鍵は前処理

― どのような分析の依頼が多いのですか。

大日方先生 :
主に次世代シークエンサーを用いた核酸の解析と質量分析計を用いた代謝物やたんぱく質の測定です。私たち2人は質量分析計を担当しています。ユーザーは学部内がメインですが、他学部や学外からの依頼も受け入れられる体制になっています。群馬大学から近隣の大学に異動した先生や、共同研究先などからも分析の依頼があります。

群馬大学 大学院医学系研究科 教育研究支援センター 共同利用機器部門
平野 瞳子 技術専門職員

― 大学の共同利用機器部門で、前処理まで含めて依頼を受けることは少ない印象があります。何かきっかけがあったのですか。

大日方先生 :
質量分析計を使う上では、やはりサンプルの前処理が非常に重要です。以前はユーザーさんにお任せしていましたが、前処理を行うにも分析機器についての専門的な知識が必要なので、「前処理も対応してもらえませんか」と頼まれることが多くありました。そのような要望を受けて、前処理についても正式に受託することにしました。これまでの自分の研究でも前処理が必要で慣れていたので、依頼分析でも受けやすいということはあったと思います。

平野技官 :
こちらで前処理まで含めて請け負うほうが、うまく分析できなかったときのトラブルシューティングがしやすく、結果としてユーザーさんにも良い結果をお返しできます。前処理と分析を別に行って、仮にその分析に失敗すると、うまくいかなかった原因が適切にあぶり出せず、実験そのものをあきらめてしまうことにもなりかねません。

― 前処理は本当に大事ですね。

平野技官 :
はい。前処理は測定結果のクオリティだけでなく、機器のメンテナンスにも効いてきます。

大日方先生 :
特にたんぱく質の分析では、前処理がきちんとしていないと分析計にもダメージを与えてしまいます。機器を良い状態に保つために、こちらで前処理の過程を把握しておきたいという背景もあります。

◆抜群に使い勝手がよかった「PRESSURE+」

― 最初に「PRESSURE+48」を導入いただきました。購入決定のポイントを教えてください。

大日方先生 :
加圧マニホールドを導入した背景は、前処理を行う機会が増えたためです。以前は、前処理を行うときに学内の他のラボから借りていました。それはバキュームタイプのマニホールドでしたが、平野さんから「加圧タイプのマニホールドもある」と聞いて、比較のためにバイオタージさんにデモンストレーションしてもらうことにしました。その場で使わせてもらったところ、非常に使い勝手がよかったので購入しました。

― 当時、ご購入の決断がとても早かったように思います。

大日方先生 :
それまで使っていたバキュームマニホールドでは、多数のサンプルを一度にまとめて処理する場合、なかなか均一に通液しませんでした。12本がけや24本がけのバキュームマニホールドがありましたが、実際は24本を1回で行うのはほぼ不可能な状況でした。ところがバイオタージさんの加圧タイプのマニホールドは48本のサンプルを均一にコントロールできて、操作もしやすかったです。それと、購入にあたって、通液したサンプルを1.5mLのチューブで受けられる回収ラックを希望したのですが、これにカスタム対応で応じていただけたことが大きかったです。固相抽出の後、1.5mLチューブで回収して次の操作にそのまま進められるようになったので、試験管で受けた後に1.5mLチューブに移し替えるという工程を減らすことができました。価格的にはバキュームタイプより高価でしたが、価格差を補って余りあるメリットを感じま した。

― その後、96ウェルプレート処理用のPRESSURE+96 も導入していただきました。

大日方先生 :
PRESSURE+96の追加購入は、数十本単位でまとめて分析してほしいという依頼を受けたことがきっかけです。前処理の依頼が増えて、ウェルプレートを使うニーズが出てきたということですね。前処理を依頼されるサンプル数はユーザーさんによってまちまちですが、だいたい数本から数十本までです。サンプル数に応じてPRESSURE+48とPRESSURE+96を使い分けています。PRESSURE+はサンプルの本数が違っても作業の内容を変えなくていいのが、いいところですね。

◆電源も要らず、ほとんどメンテナンスフリー

― PRESSURE+を導入したことで、どのようなメリットがありましたか。

大日方先生 :
加圧タイプのマニホールドは、操作がしやすく、サンプルごとのばらつきも少ないので、分析の失敗も少なくなると思います。貴重 なサンプルを扱う上で、そうした信頼性は重要ですね。それとバキュームマニホールドと違ってニードル部分を毎回洗浄しなくていいですし、ほぼメンテナンスフリーで使えるのは助かっています。必要なのは 廃液ラックを洗うことぐらいですね。事前の準備もほとんど必要ないです。

PRESSURE+

平野技官 :
窒素ボンベを準備するだけで、電源が不要なのも助かります。電気系統の故障を考えなくていいですし、急な停電などがあったときにも安心ですから。電源の場所を考えなくて良いので、置き場所のレイアウトの自由度も高いです。

― PRESSURE+を使っていて、ご要望はありますか。

平野技官 :
指挟み防止のためと思いますが、操作に必ず両手を使う設計になっていますね。理由は分かりますが、やはり片手で操作したいと思うことがあります。ピペットとチューブを持ったまま操作しなければならないことも多くて、足で操作できるフットペダルがあると良いですね。それとバキュームマニホールドと違って、上にリザーバーがつけられないのは残念ですね。

大日方先生 :
たとえば生理活性脂質を分析するとき、1mLサイズのシリンジカラムを使っていますが、サンプル量がスタート時点で5mLくらいあることが多く、全部通液させるまでにサンプル追加のための加圧操作を何度も繰り返す必要があって、面倒なんです。

― リザーバーについては、PRESSURE+ 48でもカラムの上につけられるようにするカスタマイズが可能です。別途ご案内します。

大日方先生 :
それはうれしいですね。是非お願いします。

― 今後の展望をお聞かせください。

大日方先生 :
今後は医学部だけでなく、他学部にももっと使いやすい形にしていこうと考えています。それが学内の研究活動の活性化にもつながってくると思うので、前処理も含めてもっと多くの件数をこなしていきたいですね。

― 本日は貴重なご意見をいただきありがとうございました。

群馬大学 大学院医学系研究科 教育研究支援センター 共同利用機器部門

インタビュー実施:2019年11月
PDFファイルダウンロード(670KB)

導入製品

加圧式サンプル処理マニホールド
Biotage® PRESSURE+ 48

URL:
https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/pressure_plus/

 

加圧式サンプル処理マニホールド
Biotage® PRESSURE+ 96

URL:
https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/pressure_plus/

 

複数の各サンプルに均一なフローを提供する加圧機構により、安定した回収率を実現します。パラレル処理でスループット向上に役立ちます。
PRESSURE+ 48 は 1mL、3mL、および 6mL サイズのシリンジカラムを処理できます。PRESSURE+ 96 は 96 ウェルプレートを処理できます。

利用機関

群馬大学 大学院医学系研究科 教育研究支援センター 共同利用機器部門

URL: https://www.med.gunma-u.ac.jp/graduate/
群馬大学大学院医学系研究科は、科学的知(Science)、倫理(Ethics)、技能(Skill)を探求し、それらの動的な融合から世界の医科学をリードする教育・研究・医療拠点を構築することを目標とし、先端的生命科学研究をさらに推進させ、疾病の病因究明と体系的治療戦略を実践する医学研究者を育成しています。