失敗のリスクを減らし確実な多検体処理

環境調査や水道検査に窒素吹付高速パラレル濃縮装置「TurboVap® LV」、
加圧式サンプル処理マニホールド「Biotage® PRESSURE+ 48」を活用

株式会社環境科学研究所
株式会社環境科学研究所

株式会社環境科学研究所は、環境調査のエキスパートとして水道検査から食品分析まで業務を拡大。残留農薬等の有害物質を固相抽出で分析する際の自動化を推進する目的で、バイオタージの窒素吹付高速パラレル濃縮装置「TurboVap LV」、および加圧式サンプル処理マニホールド「Biotage PRESSURE+ 48」を2018年9月に導入され、装置の性能をフルにご活用いただいています。今回は、分析事業部衛生検査課の五十川裕記さん(係長)と杉戸勇太さんに、最新機種の利点も含めてお話をうかがいました。

― まず、御社の概要やお仕事内容をご紹介ください。

五十川さん :
当社は1985年に環境分析の受託事業からスタートした企業です。業務内容は環境分析を主軸にしつつ、現在は水道法第20条の登録検査機関として上水検査の受託や、食品衛生法に基づく登録検査機関として食品中の有害物質分析となります。わたしの所属している部署では、環境、上水、食品のいずれにも共通して、有機物の有害物分析を担当しています。簡単に言うと、農薬等の検出ということですね。

― 他の検査機関と比べて、御社の特徴はなんでしょう。

五十川さん

五十川さん :
環境分析も水道分析も、市町村や水道事業体などから請け負うことが多いので、やはり分析結果の信頼性が重要になります。数字の正確性、お客さまから信頼を得ていることが当社の強みだと思います。水道水も環境水も対象ですが、分析のカテゴリーとしては別になります。水道の検査は、水道法第20条に定めた規定通りに厳密に実施する必要がありますが、川の水などの環境水は環境負荷や生物への健康影響等の観点で水質をモニタリングすることがメインになります。それらで培った技術を生かして、2008年に食品衛生法登録検査機関に認定され、食品中の残 留農薬の分析などにも力を入れています。精度管理等で良好な結果を出し続ける努力をしていますので、先ほども申し上げましたが、お客さまからは非常に高いご信頼をいただいていると思います。

◆多検体対応が魅力、使用頻度は毎日

― わかりました。では、お仕事の中でどのようにTurboVap LVとPRESSURE+ 48をご活用いただいていますか。

杉戸さん

五十川さん :
まず、PRESSURE+ 48の方ですが、固相抽出の際の溶出操作で使用しています。環境調査でも上水検査でも有害物質の分析は固相抽出が必要ですが、多検体を一度に処理できるので便利です。一方、TurboVap LVは、固相抽出で溶出してきた溶液を窒素吹付けで濃縮するという使い方です。当社の場合、検体数が多いので、TurboVap LVも毎日使用しています。

― なるほど。では、TurboVap LVとPRESSURE+ 48の利点として感じておられることをお聞かせいただけますか。

五十川さん : 固相抽出は、有機物を一度カートリッジに吸着させて、そこへ有機溶媒を流してカートリッジから溶出させます。その操作でPRESSURE+48を使うわけですが、いままでは注射筒を使ってカートリッジから人手で押し出していたんです。とくに、スピードコントロールが固相抽出のキモになりますが、検査員の個人差もありますし、そもそも人間が同じ速度での押し出しをキープするのはたいへんです。PRESSURE+ 48を使えば、多検体同時に同じスピードで出せることがメリットです。

◆シースルーでストレスフリー、メソッド/ウェークアップ機能活用

― TurboVap LVは新型になってからご購入いただきましたがいかがですか。シースルー型に改良されたのですが。

五十川さん :
そこは抜群ですね。窒素吹付装置の最大のストレスになるところは、液量が少なくなってきたときに、いちいち止めて開けて中を確認するという操作が入るところです。ずっと付きっきりになってしまい、その間はほかのことが何もできなくなります。外から液面が見えるということはまず失敗がないですし、ストレスフリーですばらしいです。6列ありますが、奥までちゃんと見通せますし、前が重なって奥が見えにくいということもありません。また、直線的に窒素を吹き付けるのではなく、らせん状に吹き付けて濃縮するガスボルテックスシアリング技術が優れていると思いますね。濃縮スピードも速いですし、もちろんのことながら多検体同時処理のメリットも大きいです。

― 今回新しく装備されたメソッド機能はお使いですか。

五十川さん :
はい、使ってますよ。ルーチン分析ですと、決まった溶媒量で決まったところまで濃縮するという操作になりますので、あらかじめ設定しておくと便利です。ワンタッチで誰でも操作できますし、時間が来れば確実に終わっているのでありがたいですね。あと、地味なことかもしれませんが、排気ダクトが付いているのでドラフトボックスの外に置けることが利点だと感じています。作業環境、健康影響の観点からもいいです。やはり、ドラフトの中にごちゃごちゃあると、見た目が悪いですし、掃除しにくくて汚れもたまりますしね。以前の窒素吹付装置はドラフト 内に置いていたので、いまはずいぶんスペースができて助かっています。それから、ウェークアップ機能(スリープモードとオートスタート機能)をよく使っています。ウォーターバスは温度が上がるまで少し時間がかかるので、平日の朝の始業時に40℃になるように設定して、毎日自動起動するようにしています。曜日ごとに設定できるので、土日はオフにしておけるのは便利です。

株式会社環境科学研究所

杉戸さん :
曜日まで設定できるのはすごいし、助かりますよね。カレンダーで祝日を含めて設定できれば最高です(笑い)。

― ありがとうございます。その点をお褒めいただいたのは初めてです。

五十川さん :
ウェークアップ機能を使う際は、ウォーターバスの水が入っていないと空だきになってしまいますので、平日は水を入れっぱなしにして、1週間ごとに排水して入れ替えるという運用をしています。

◆溶出操作のばらつき解消、精密なスピードコントロール

― なるほど、参考になります。ところで、TurboVapLVをご導入いただく前は別の窒素吹付装置をご利用だったのですね。

五十川さん :
そうなんです。そちらはアルミブロック型だったので、液がどこまで減ったかが外からは見えませんでした。基本的に、窒素吹付濃縮は溶媒を少し残すことが多いです。溶媒中に留めないと空気中に揮散してなくなってしまう成分もありますから、全部飛ばすと失敗になってしまうことが多いです。それで、そのぎりぎりのところを目指して濃縮します。そうなると、溶媒が少なくなってくると、1分おきに止めて、試験管1本1本を確認するなどの手間があってたいへんでした。物質の特性を考えてどこまで濃縮するかを決めるわけですが、濃縮操作は前処理の最後ですので、そこで失敗すると全部やり直しになってしまいます。そこで、外から液面が見えて、失敗のリスクがかなり下がるというのは、TurboVap LVの最大の利点だと思います。これは、検査員のみんなが認めるところで、100人が100人、いいと言うと思いますよ(笑い)。

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― ご評価いただき感謝します。PRESSURE+ 48については、以前は手作業だったということですね。

五十川さん :
そうです。スピードが遅かったり速かったりするということは、カートリッジから物質を溶出するときに100%出たのか50%なのかというバラツキが生じることにつながります。人手でやると、人によってスピードが違ったり、同じ人でも日によって違ったり、検体の1本目と10本目が違ったりというバラツキが起こりえます。それを機械で標準化すれば、いつも同じ品質で試験結果を得ることができます。吸引操作のバキュームマニホールドもありますが、PRESSURE+ 48の方が細やかなスピードコントロールがしやすいことが強みでしょうね。

― ご活用いただきうれしいです。では、逆に気になる点や要望などはございますでしょうか。

杉戸さん :
PRESSURE+ 48ですが、リザーバーの受け器にもう少し汎用性があったらなあと思います。回収ラックの穴がぴったりすぎてうまくはまらないスピッツ管があります。スピッツ管はガラス製品なのでサイズに多少のぶれがあります。そのため、回収ラックの穴にあと1ミリ余裕があればいいのですが……。

五十川さん :
管の径の若干のバラツキで使えたり使えなかったりするので、なんとかならないものかなと……。

― わかりました。要望として承ります。

杉戸さん :
TurboVap LVの方ですが、ウォーターバスの排水口の位置を改善していただけるとありがたいです。いまは、底面の隅に排水口があるために、最後に機械を斜めに傾けて水を出さないといけません。流路に傾斜をつけて中央部から排水できるのが理想だと思います。

五十川さん :
排水弁を開放すればそのままできれいに排水されるようにしてくれると非常に助かります。

杉戸さん :
装置の重量も結構ありますので、その点で女性には扱いづらかったりもします。水の交換がおっくうになると、メンテナンス的にも良くないと思いますので、新機種を開発する際にはぜひ考慮していただけたらと思いますね。

― ありがとうございます。水切れがよくないというご指摘は、開発にフィードバックさせていただきます。

五十川さん :
あと、他メーカーの別の装置だと、エラーが起きたときにメールが飛ぶとか、スマホのアプリでお知らせするとか、そういう機能が付いているものがあります。そんな機能も考えてもいいんじゃないでしょうか。試験所によっては、別のところにいても、終了したと通知が来たりするとうれしい場合もあると思います。

杉戸さん :
ちょっと近未来的な機能ですよね。通知がたくさん来て、たいへんかもしれませんが(笑い)

株式会社環境科学研究所

― 確かにあると便利かもしれませんね。貴重なご意見ありがとうございました。

インタビュー実施:2018年12月
PDFファイルダウンロード(1.5MB)

導入製品

窒素吹付高速パラレル濃縮装置
TurboVap® LV

URL:
https://www.biotage.co.jp/products_top/evaporation/tvlv/
独自のガスボルテックスシアリング技術により、複数のサンプルのエバポレーションを同時に且つ高速に行う窒素吹付式の濃縮装置です。1.5mL バイアルから φ30x165mm までの試験管用にデザインされており、試験管の大きさに応じて 48 サンプルまたは24サンプルまで、同時に濃縮することができます。

 

加圧式サンプル処理マニホールド
Biotage® PRESSURE+ 48

URL:
https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/pressure_plus/
PRESSURE+ 48 は 1mL、3mL、および 6mL サイズのカラムに対応する、加圧式サンプル処理マニホールドです。個々に独立した加圧機構を採用しており、サンプルの粘性を問わず均一なフロー、安定した回収率を実現します。パラレル処理で、スループット向上に役立ちます。

導入機関

株式会社環境科学研究所

URL: http://www.kankyokagaku.com/

株式会社環境科学研究所は、独立した総合環境調査会社として、計量証明事業、環境調査事業、食品検査事業に取り組んでいます。厳格な精度管理のもと、新しい時代に対応できる調査・分析技術の拡充を図り、専門的視点のみにとらわれず総合的視点を踏まえた高品質な専門サービスを提供できる総合コンサルタントとして、お客さまが取り組む環境や食の「保全」「管理」「創造」をサポートし、地域社会の「安全・安心」の創生に貢献していきます。
創立:1985年1月
資本金:2500万円
本社:名古屋(岐阜支店、三重営業所)