多検体の前処理を高速・高信頼性で支える

農薬分析、水質分析などに窒素吹付高速パラレル濃縮装置
「TurboVap LV」を活用

株式会社ブルーム
株式会社ブルーム

株式会社ブルームは、分析事業を拡大強化する目的で、これまでの化粧品分析だけでなく、農薬分析などの新領域にアプローチするため、最新機器の導入など分析環境を一新。その一環で、多検体に対応した前処理を効率化するため、バイオタージの窒素吹付高速パラレル濃縮装置「TurboVap LV」を導入されました。以前の手作業の時代と比べて、圧倒的な高速性と信頼性が実現したとご評価いただいています。今回は、現場でご使用いただいている分析部マイスター(工学博士)の松本宇生さん、分析部環境グループ(工学博士)の田久保剛さんにお話をうかがいました。

― まず、御社の概要をご紹介ください。

松本さん :
当社は、化粧品の輸入代行に関するトータルサービスを提供する企業です。お客さまが海外から新しく輸入したい化粧品・化粧品原料について、事前確認・処方調査から、サンプル品の成分分析、行政機関への各種届出、輸入・通関、さらに輸入した製品の試験・品質管理や、法定表示用のラベル作成、検品、パッケージングなどの加工作業、そして最終的な配送まで、全行程を丸ごとお任せいただけることが強みです。

― なるほど。その過程で分析業務が必要になるわけですね。

松本さん :
その通りです。輸入した化粧品が薬機法(改正薬事法)に適合しているかどうかを検査するレギュレーション分析が分析業務全体の3~4割を占めています。薬機法の化粧品基準で規制されている約80成分を調べる当社が始めた分析サービスです。

― 業界での御社の位置づけというか、似たようなタイプの企業は他にもあるのでしょうか。

田久保さん :
分析専門の企業で、化粧品の分析を手がけるところはあると思いますが、化粧品輸入代行を行う企業でここまで分析機を揃えて分析を行うというのはめずらしいというか、他では聞いたことがありません。

松本さん :
加えてですが、国の地方創生事業の一環で、ジャパン・コスメティックセンター(JCC)をここ佐賀県唐津市に整備する計画が進んでいまして、当社もこれに関与しています。弊社の代表取締役である山﨑信二がJCC副会長を務めています。ですので、そちら経由で分析の仕事が来ることもありますね。ここの敷地もまだ余裕がありますから、関連する企業がいくつか集まって きています。

― JCCについてもう少しご説明願えますか。

松本さん :
はい。フランスにあるコスメティックバレーをお手本に、2012年ごろから唐津コスメ構想がスタートしたと聞いています。美容・健康・素材・交流を柱とした「国際的コスメティッククラスター」の実現を目的に、地域経済の活性化や新市場の開拓を目指す産学官の連携組織として、228の会員(2018年9月現在)で構成されています。JCC自体の設立は2013年で、2015年からは一般社団法人として活動しています。

◆分析業務を拡張、多検体処理で自動化を検討

― それは興味深い取り組みですね。では、おふたりのお仕事内容を教えていただけますか。

松本さん :
そうですね。いまもご説明したように弊社は化粧品の分析がメインなのですが、最近は仕事の対象を広げていまして、食品、環境分野など幅広く取り組んでいます。例えば、インクのトナーに含まれる微量金属を測定してくれといった依頼もあります。わたしの場合は、昨年から新しくはじめた残留農薬の分析を主に担当しています。対象は食品が多いですが、化粧品も原料に植物を基にした油やエキスを使っていることがありますので、安全・安心の証明として農薬の検査をしたいという依頼があります。

田久保さん :
わたしは水質分析が専門です。飲み水や環境水などを主に担当しています。業務を行っていく中で、厚生労働大臣登録の水道法に基づく検査機関として、自治体や企業のお客さまからの依頼に応えています。地下水(井戸水)などは個人のお客さまからの持ち込みもあり、役所などに提出するための分析結果をまとめてほしいといったお話もあります。

株式会社ブルーム

― ありがとうございました。ところで、御社では昨年、分析環境を一新され、様々な最新の分析機器を導入されています。今回のTurboVap LV導入の経緯についておうかがいできますか。

松本さん :
そうですね。これらは新しい分析業務のために導入した機械です。化粧品もそうですが、とくに食品分野では残留農薬に関する分析へのニーズが高いため、いろいろな分析に手を広げていこうとしたときに、農薬分析をはじめようということになりました。これに関し、厚生労働省から「食品に残留する農薬等の試験法」としての通知が出されていまして、指定された工程として窒素吹き付けによって溶媒を飛ばすという作業が入ります。温度条件なども細かく指定されています。それで、TurboVapを入れる前は、それこそ窒素のガスボンベから手作業でバルブを操作して吹き付ける流量を調節したり、水浴もウォーターバスで温めた水を何回も汲みなおしたりして、通知法の文書を見ながらまさに手探りで農薬分析を立ち上げていきました。今後、検体数を増やすなど本格的に進めていくためにはこの方法では無理だなと感じ、自動化できる装置を探したという経緯になります。

― なるほど。検討の過程では他社製品との比較もされたのでしょうか。

松本さん :
いいえ。窒素吹付装置としてはバイオタージさん以外の選択肢はなかったです。デザインも良かったので、これに決めました。

◆信頼性が高く高速、時間短縮に大きな効果

― それはありがとうございます。扱える検体数の多さと濃縮効率の高さではどこにも負けないと自負しております。

松本さん :
窒素をらせん状に吹き付けるガスボルテックスシアリング技術ですか、溶媒を飛ばしやすいので、その点もTurboVapを 選んだ大きな理由ですね。実際に使ってみると、24検体を同時に処理できるので速くて、本当に楽になりました。やはり、手作業の時は温度のムラが心配でずっと見ていないといけませんでしたが、TurboVapなら温度管理も完全ですから、分析の信頼性が向上し、自信を持って結果を出せるようになったと思います。

田久保さん :
水道水の分析についても濃縮方法は決まっていて、窒素吹付装置が必須です。とくに、ある程度暖めないと飛びにくい溶媒を使用しますが、これまでは水温をコントロールすることがなかなかたいへんでした。TurboVapでそれが容易になりました。サンプルをかけたら、ほかの作業を進めることができるので、とても効率がよいです。手作業の時は、サンプルごとにガス圧が変わったりセットした流れの位置が少し違ったりして、あっちは終わったのにこっちは終わってないとか、30分で終わるところが全体で1時間かかってしまったりしまうことが起こります。TurboVapは、ばらつきがなく均一に濃縮が進むところが重宝しています。

― では、あらためてTurboVapの利点について、感じていることをお聞かせください。

松本さん :
そうですね。先ほどご説明した残留農薬の通知法では、温度が40度以下でやりなさいなどとなっているのですが、溶媒によってこの温度では普通に窒素を吹き付けただけではなかなか飛ばなくて時間がかかる場合でも、TurboVapのボルテックス方式だと溶媒の中まで窒素の流れが通りますので、安定して速いですね。

◆窒素使用量を大幅削減、シンプルな操作性

― ご評価いただきありがとうございます。らせんに吹き付けたガスの気道が空洞になっていますので、その中を気化した溶媒が通ることにより、効率良く溶媒を排出できる仕組みになっております。濃縮効率が3倍から10倍程度高いとうたっております。

松本さん :
なるほど。その濃縮効率の向上により、窒素の使用量が削減できていると思います。

田久保さん :
ここでも、時間短縮に貢献していますよね。なかなか飛ばないとそれだけ時間がかかるわけですし、ガスの流量を上げたりして使用量が増えることにもなります。

松本さん :
うーん、確かにはっきり減ったと感じています。以前ならボンベを3本使った感覚なのに、まだ1本余っているなと(笑い)。

株式会社ブルーム

田久保さん :
ボンベ交換の手間もたいへんですからね。意外に大きなメリットだと思います(笑い)。

― お使いいただいている最新型は昨年7月に発売されたもので、外から濃縮状況が確認できるスケルトンタイプになっています。その点はいかがですか。

松本さん :
装置を止めなくても中が見られるのはいいと思います。便利ですよね。

― 操作性はいかがですか。

松本さん :
そうですね。タッチパネルになって、シンプルでわかりやすいです。

― ありがとうございました。では、逆に不満に感じているところとか、ご要望などはございますか。

田久保さん :
わたしとしては、TurboVapの窒素吹付機能を、固相抽出カラムを乾燥させる用途に使用できるアダプターのよう なものがあればうれしいと思っているのですが、そういうのはどうでしょうか。

― それは想定外の使用法になりますので、そうした使い方に装置が耐えられるかどうかメーカーとして保証することができないのです。固相乾燥は別の装置をご用意できますので、あらためてご相談させてください。

松本さん :
あとはそうですね。飛ばした溶媒の回収ユニットのようなものはないでしょうか。TurboVapは溶媒を排気ダクトから 排出してしまっているので、ちょっともったいないですし、ダクトのないところでも使えたら便利かなと思いまして。

― TurboVapにそのようなユニットはないのですが、スクラバーを使うなど何らかの方法があるかもしれませんので、これものちほどご相談させてください。

株式会社ブルーム

松本さん:
いや、製品にはすごく満足していますので、あえてわがままを言うと、という感じですので(笑い)。今後、農薬分析の仕事が増えてきたり、化粧品の分析でも利用するということになれば、48本のラックを使うことになるかもしれませんね。

― わかりました。ぜひ今後もご愛用ください。今日は長時間ありがとうございました。

インタビュー実施:2018年8月
PDFファイルダウンロード(1.5MB)

導入製品

窒素吹付高速パラレル濃縮装置
TurboVap® LV

URL:
https://www.biotage.co.jp/products_top
/evaporation/tvlv/

独自のガスボルテックスシアリング技術により、複数のサンプルのエバポレーションを同時に且つ高速に行う窒素吹付式の濃縮装置です。1.5mLバイアルからφ30x165mmまでの試験管用にデザインされており、試験管の大きさに応じて48サンプルまたは24サンプルまで、同時に濃縮することができます。

導入機関

株式会社ブルーム

URL: https://www.bloom-jp.com/

株式会社ブルームは、(1)化粧品輸入代行(2)品質管理GQP・GVPサービス(3)成分分析受託-を通じて、安心・安全な化粧品を社会にお届けしています。とくに、分析に関しては、「正確・スピーディー・低コスト」で提供することを目指し、レギュレーション分析・セレクト分析など多種・多様な分析メニューを揃え、お客さまのさまざまなニーズにお応えしています。
創立:1991年10月
資本金:1億9050万円
社員数:33名