コンパクトな Flash-MS システム
「Isorela Dalton 2000」
導入で研究効率が一層アップ

~Biotage 各装置を活用して医薬品中間体製造・受託研究を推進~

日本理化学工業株式会社
日本理化学工業株式会社

日本理化学工業株式会社では、医薬品中間体の開発・製造、研究用試薬の製造と受託研究、フロー合成にバイオタージ製品数種を活用されています。今回は新たに導入されたIsolera Dalton2000「マススペクトル検出フラッシュ自動精製システム」を中心に、同社研究開発室の児玉英彦取締役(兼研究開発室長)と、研究員の鈴間喜教研究員、畑中惇志研究員、赤井勇斗研究員にお話をうかがいました。

― まず、御社の事業内容と研究テーマについて改めてご説明いただけますか。

日本理化学工業株式会社児玉取締役:
弊社は本社・本社工場を大阪府東大阪市、大阪府和泉市にメインとなる製造工場を持ち、ラボから製造までトータルで実施可能な施設を持っています。主な事業内容としては医薬品中間体の開発・製造、研究用試薬の製造です。最近では、受託研究の初期検討から製造まで行っています。具体的な業務内容としては、カルボスチリル(キノロン、キノリノン)骨格、あるいはこれに類似する複素環化合物の合成を中心に、低分子の有機化合物の基礎研究やプロセス研究及び製造です。
このメイン業務以外に、新技術の開発として「フロー合成」の基礎研究を進めています。フロー合成とは、従来のような反応釜を使うのではなく、細い管に試薬を通して化学合成をするものです。現在では、1日20㎏程度の製造ができるまでになりました。また、2014年から公的助成金を受けて本格的な研究開発にも取り組んでいます。今後はフロー合成やペプチドを含めた中分子の合成にも積極的に取り組みたいと考えています。

◆省スペースと操作性で選んだBiotage製品

― なるほど。新技術も取り入れたご研究に弊社製品を数多く採用いただき大変光栄に存じます。そもそもバイオタージを採用されたきっかけとは?

児玉取締役 :
2012年に初めてInitiatorを導入しました。当時、カップリング反応を効率良く進める方法を探していました。それ以前はオイルバスを使用して、丸1日かけて作業していましたが、弊社では夜間は装置を稼働させないので、非常に手間のかかる大変な作業でした。
マイクロウェーブを使えば、短時間で反応が完結することがわかり、これなら作業を大幅に効率 化できると思って、導入を決めました。
実際、Initiatorをデモしてみると、とってもコンパクトだと感じましたね。それとタッチパネルの使用感が良かったです。省スペースで非常に操作しやすい点が気に入って、バイオタージに決まりました。その後、続けてIsoleraを2台購入しました。こちらもコンパクトで使いやすいです。やはり中圧で短時間で分取できるというのは非常にコストパフォーマンスが高い装置だと感じます。研究員たちもバイオタージ製品は非常に使いやすいと実感しています。この他にもペプチド合成用のワークステーションを購入しました。何よりバイオタージ製品はいずれも非常に使いやすくて、しかもコンパクトな作りは実験スペースの問題を考えても非常に嬉しい限りです。

◆Flash-MSの選択は中圧分取のパフォーマンスを重視

― ありがとうございます。今回、Isolera Dalton2000を購入検討するに至った経緯をお聞かせ願えますか?

日本理化学工業株式会社児玉取締役 :
実は、この機種の前の、Daltonという製品が出たときにも購入しようか迷いました。し かし分子量の上限が800という点が、弊社のターゲットには少々もの足りなくて、結局諦めました。 そしてその後継機種ともいえる分子量2000までというDalton2000が発売されたので、これは是非とも! と購入を決めました。

― Dalton2000はFlash-MSというカテゴリーの装置になりますが、製品選択の決め手はどのような点だったのでしょうか。

児玉取締役 :
中圧分取装置の使いやすさでは、やはりバイオタージが1番だと私は感じています。基本的に、MSトリガーの部分はどのメーカーもほぼ一緒ですので、中圧分取のパフォーマンスがより良いもの・使いやすいものが決め手になると考えました。その点を考慮すると、Dalton2000となりました。

日本理化学工業株式会社― なるほど。約2年前にはフラッシュ精製装置のIsolera + ELSDを導入いただきましたが、このときの導入によって何か改善されたことはございましたか? 例えば、反応追跡などでもTLCを見る回数が減ったとか。

鈴間研究員 :
ELSDではUVの無いものが確認できます。それまではいちいちTLCを上げてチェックしなければならなかったので、そういう点で以前よりかなり時間短縮になり、仕事の効率が良くなって助かりましたね。
具体的にTLCをチェックする回数というのは、カラムのサイズにもよるので一概には言えませんが、 ELSDが無かったらいつ終わるのか、どこに出ているのかわからない状況ですので、多ければ10回以上は見る必要がありましたが、ELSDをちゃんと見ていたらTLCの手間が無くなった感じです。

◆Flash-MS Flash-ELSD、特長を生かして効率的に活用

日本理化学工業株式会社児玉取締役 :
現在使用している2台のIsoleraはそれぞれPDAとELSDとの組み合わせで持っていますが、ペプチドはUV吸収の無いものが多いので、ELSDで確認することが結構多いですね。8割から9割はIsolera + ELSDの方を使っています。未知の化合物ならELSDで良いのですが、既知の化合物となるとMSがわかっているので、MSトリガーを使ってピンポイントで分取出来るDalton 2000が便利ですね。そういう点でIsoleraとDalton 2000を上手く使い分けながら研究を進めています。まだDalton 2000を導入して間がないのですが、作業の効率化に繋がりました。

日本理化学工業株式会社― なるほど。ELSD導入で以前よりかなり作業が改善され、さらに今回Dalton2000の導入によって、ELSDを補完できた、というわけですね。
他にELSDの補完という形でDalton2000を活用された事例はございますか。

畑中研究員 :
ELSDはメソッドを組んで分取しているのですが、原料と反応物に分けた時にどちらか片方しか見えない時ということがありました。そのような時にDalton2000を使うと両方見ることができた、という事がありました。

― なるほど。いまのところ、MSの値そのものを見るというより、原料が変化したその動きを確認するために、MSクロマトを利用しておられるのでしょうか?

日本理化学工業株式会社赤井研究員 :
はい。そうですね。あと、すべての化合物は見ることができませんが、固体MSであるDalton2000に付属しているASAPも使用しています。前処理なくサンプルをそのまま測定できるのでとても便利です。

◆Dalton2000の操作性&起動の速さは抜群

― IsoleraとDalton2000ではソフトが違うと思いますが、ソフトの使い勝手も含めていかがでしょうか?

鈴間研究員 :
Isoleraと比べて、たしかに違いますがそんなに大きく変わらないと思います。元々かなり使いやすいので、操作が少し増えるぐらいです。その点は問題ないですね。

畑中研究員 :
MSの立ち上げ時の減圧もボタン1つでできるのは、操作性が非常に考えられていて良いと思いますね。

― 電源は使うたびに入れておられるのですか?

畑中研究員 :
はい、電源は使う前にその都度入れて、その日のうちに落としています。

児玉取締役 :
その起動の速さも大事ですからね。普通ならLC-MSだと起動して1日ぐらいかかりますから。それに比べると圧倒的に速いですね。

― ありがとうございます。ずっと電源を入れたままのユーザー様ではこの点はあまり気がつかないかもしれませんが、毎日ON/OFFされる場合、起動時間は大きな問題ですね。

日本理化学工業株式会社― 先ほどお使いいただいているASAPだと、APCIの拡張的な使い方ですのでMSが出ないものもあると思うのですが、どのくらいの割合で検出できていますか?

畑中研究員・赤井研究員 :
半分ぐらいでしょうか?

鈴間研究員 :
ペプチドのような極性の高いものになってくると、出ないものもあります。

― 高極性のものもASAPのように見ることができれば便利でしょうか??

一同 :
ええ、そうですね。

◆もっと使いやすく、もっと時短に。手軽で多様なオプションの開発に期待

児玉取締役 :
結局ASAPはAPCIですので、私たちのサンプルでは先ほどのように確認できたりできなかったりと問題があります。私たちはペプチドなど高極性の化合物を結構たくさん使うので、できればESIに交換した時にもこのASAPが使えるような、簡単に取り換えるインジェクションのオプションがあれば非常に便利だと思いますが。

日本理化学工業株式会社― 現在、ESIでの新しいオプションの開発が進んでおります。後日改めてこちらのご提案をさせて頂きたいと思いますので、もう少々お待ちください。その他バイオタージ全般についてご意見などありましたらお願いいたします。

畑中研究員 :
バイオタージ製品を使ってみて、全体的にメンテナンスやトラブルが起こったときの対処がしやすい印象がありますね。Isoleraの配管が少し詰まった時も、マイクロウェーブでちょっとトラブルが起きた時も、思ったよりも簡単に自分たちで直すことができたので、それは非常に高評価な点ですね。

鈴間研究員 :
Dalton2000も、1回だけコーン部分を外して拭いたことがありますけど、わかりやすかったですね。

日本理化学工業株式会社― では最後に、今後のご研究に関して可能な範囲で結構ですので教えていただけますか。

児玉取締役 :
ペプチド合成のワークステーションを導入していますが、私たちの扱うペプチドはどちらかといえば分子量の小さなものが中心です。そして液相合成で安価で大量に作れるものをターゲットにしていますので、それに合った装置も視野に入れています。ラボスケールから数百グラムのスケールアップまで一貫して考えることができるのもバイオタージの良いところではないでしょうか。
新しいラボも完成して、いろいろと思案中です(笑)

日本理化学工業株式会社― 多くの貴重なご意見は、今後の製品開発の参考にさせて頂きたく存じます。本日はお忙しいところ長時間ありがとうございました。

インタビュー実施:2018年6月
PDFファイルダウンロード(1.52MB)

導入製品

マススペクトル検出フラッシュ自動精製装置
Isolera Dalton 2000

URL:
https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/isolera_dalton2000/

導入機関

日本理化学工業株式会社

URL: http://www.nichiri.co.jp/

日本理化学工業株式会社は、「フラスコからプラントへ繋ぐ化学で社会に貢献する」を企業理念としています。本社工場およびいずみ工場(大阪府和泉市)の2工場体制で、医薬品中間体の開発・製造、研究用試薬製造および受託研究(初期検討から製造まで)を推進しています。2018年4月にはラボから製造までフロー合成で製造可能な研究室を新設。
会社設立:1919年7月
本社所在地:大阪府東大阪市
資本金:2000万円
従業員数:36名