フラッシュクロマトグラフィーの最適化
フラッシュクロマトグラフィーの最適化について
化合物合成の過程において、反応混合物から目的の化合物を単離・精製する手段として、昨今ではプレパックドカラムを用いた中圧自動精製システムが盛んに利用されています。
市販の装置のほとんどが、そのシステムを簡単に利用できるよう、ソフト・ハードの両面において様々な工夫を凝らしています。 それらシステムを利用する上で必要なフラッシュクロマトグラフィーに関する基礎知識について取り上げます。
フラッシュクロマトグラフィーのメソッド開発をする場合、順相アイソクラティック、順相グラディエント、逆相の特定の3タイプのフラッシュ精製が考えられます。そのうち、順相の場合、以下のタイプが考えられます。
- 薄層クロマトグラフィー(TLC) Rf(保持係数)を CV(カラムボリューム)に変換
- 薄層クロマトグラフィー(TLC)を利用した最適な溶媒選択性の決定
- 薄層クロマトグラフィー(TLC)を利用した最適な溶媒濃度の決定
- 薄層クロマトグラフィー(TLC)のデータに基づいた最適なカートリッジサイズとサンプルロードの決定
薄層クロマトグラフィー(TLC)を利用した化合物保持と分離度を予測
Flash精製を成功させるために、TLCプレートを利用したメソッド開発を推奨しています。TLCプレートにおける成分の保持をRf(保持係数)によって測定しますが、これをFlash精製へ移行する場合、CV(カラムボリューム)値を理解することが必要です。
RfとCVはCV=1/Rfであらわされ、一般的にTLCで利用される方法がFLASHクロマトグラフィーにも適用できます。
TLCで適切な展開溶媒を探す場合、一般的に低いRf(0.15~0.35)に目的の化合物を展開できる移動相が適切とされ、Rfが低いとCVが大きくなることで、シリカと化合物との接触時間が長くなり、成分分離の向上が望めます。
ΔCVの最大化がFlash精製で化合物を分離する際の重要なポイントになります。
バイオタージ社のFlash精製では任意のカートリッジサイズで可能なサンプルロードの範囲をΔCVによって決定しています。

図1:
RfとCVの関係を上図に示します。
Ⅰ:化合物AとBは、それぞれ0.5と0.4のTCLで良好に分解されますが、
同じ溶媒条件のFlash精製では、A、Bそれぞれで保持及び分離濃度が
低くなります。(ΔCV=0.5)
Ⅱ:Rf(A=0.33, B=0.20)を低くすると、保持及び分離度が高くなります。
(ΔCV=2)。
III: 化合物のRfをさらに小さくすると、分離度はきわめて高くなります。
(ΔCV=5)
表1: RfからCVへの換算表
| Rf | CV | 
|---|---|
| .90 | 1.10 | 
| .85 | 1.17 | 
| .80 | 1.25 | 
| .75 | 1.33 | 
| .70 | 1.40 | 
| .65 | 1.54 | 
| .60 | 1.65 | 
| .55 | 1.81 | 
| .50 | 2.00 | 
| .45 | 2.22 | 
| .40 | 2.50 | 
| .35 | 2.86 | 
| .30 | 3.33 | 
| .25 | 4.00 | 
| .20 | 5.00 | 
| .15 | 6.67 | 
| .10 | 10.00 | 
表2: Biotage カートリッジローディング表
| Part Number | Model | Weight (g) | Silica Size (µm) | Pore Width (Å) | Capacity | Flow Rate (mL/min.) | CV (mL) | 
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| FSRD-0445-0005 | Silica D | 5 | 60 | 60 | 50–500 mg | 18 | 9 | 
| FSRD-0445-0010 | Silica D | 10 | 60 | 60 | 100–1000 mg | 40 | 15 | 
| FSRD-0445-0025 | Silica D | 25 | 60 | 60 | 200–2000 mg | 80 | 42 | 
| FSRD-0445-0050 | Silica D | 50 | 60 | 60 | 0.5–5 g | 120 | 80 | 
| FSRD-0445-0100 | Silica D | 100 | 60 | 60 | 1–10 g | 120 | 150 | 
| FSRD-0445-0200 | Silica D | 200 | 60 | 60 | 2–20 g | 200 | 310 | 
| FSRD-0445-0350 | Silica D | 350 | 60 | 60 | 3.5–35 g | 200 | 530 | 
| FSUD-0443-0005 | Silica HC D | 5 | 20 | 50 | 100–1000 mg | 18 | 9 | 
| FSUD-0443-0010 | Silica HC D | 10 | 20 | 50 | 200–2000 mg | 40 | 15 | 
| FSUD-0443-0025 | Silica HC D | 25 | 20 | 50 | 0.5–5 g | 80 | 42 | 
| FSUD-0443-0050 | Silica HC D | 50 | 20 | 50 | 1–10 g | 120 | 80 | 
| FSUD-0443-0100 | Silica HC D | 100 | 20 | 50 | 2–20 g | 120 | 150 | 
| FSUD-0443-0200 | Silica HC D | 200 | 20 | 50 | 3.5–35 g | 200 | 310 | 
| FSUD-0443-0350 | Silica HC D | 350 | 20 | 50 | 7.0–70 g | 200 | 530 | 
