新研究拠点で創薬研究をさらに加速

~パラレルペプチド合成装置「Syro」
マイクロウェーブ合成装置「Initiator+」
Flash自動精製装置「Isolera」
高速濃縮装置「V10 Touch」を増設・活用~

ペプチドリーム株式会社
ペプチドリーム株式会社

ペプチドリーム株式会社は、2017年8月に本社を川崎市に移転し、「川崎市殿町国際戦略拠点(キング スカイフロント)」に大幅拡張した新研究拠点を構えました。創薬研究が一段と高度化されることにより、画期的な新薬の創出が期待されます。このたび、これに合わせてバイオタージのFlash自動精製装置とペプチド合成装置、濃縮装置などを追加導入いただきました。今回、取締役研究開発部長の舛屋圭一さん、研究開発部合成グループのプログラムリーダー西丸貴弘さん、同じく合成グループの松井克磨さんと福田桂大さんにお話をうかがいました。

― 3年前にユーザーレポートの取材でおうかがいしています。今回はそれ以来ですが、あらためて御社の概要をお聞かせください。

ペプチドリーム株式会社舛屋さん :
ペプチドリームは、「日本発、世界初の新薬を創出し社会に貢献したい」という思いから設立された企業です。特殊ペプチドを用いた創薬企業の世界的なリーダーとして、研究開発に取り組んでいます。独自の創薬探索システム PDPS(Peptide Discovery Platform System)を用いて、きわめて広範囲にわたる特殊ペプチドを多数(数兆種類)合成し、高速での評価を可能にすることで、創薬において重要なヒット化合物の創生、リード化合物の選択、もしくはファーマコフォアの理解を簡便にしかも効率的に行えることを特徴としています。

◆業務量増大で機器増設、まだ第1段階

― 本社・研究所をこの8月に移転されたばかりです。この3年間の動きと合わせて新本社についてもご紹介いただけますか。

舛屋さん :
これは念願の新社屋なんです。旧本社(東京大学先端科学技術研究センター内)では、もう人も機材も増やせなくなっていました。顧客とのストラテジックコラボレーションも増えていますし、インハウスのプロジェクトもありますから、当社が抱えている案件は3年前の3倍近くになっています。それだけの人も機械も増やすことができる新しい場所が必要だったということです。今回、いろいろな機器も増設しましたが、これはあくまでも第1段階です。

とくに、以前との大きな違いはストラテジックコラボレーションが増えていることですね。これは、単なる研究受託ではなく、当社と相手が持つ技術をマッチングさせて総体で取り組み、他では出せないような成果を生み出していくことが目的です。すでにいくつかの企業と研究を進めており、いいところまで来ているものもあります。もちろん、当社の技術を丸ごと提供するテクノロジートランスファーも進めていきますし、画期的新薬を患者さんに届けるために全方位で活動していきます。いまのビジネスも7割がたは海外ですし、日本だけに拠点を置く会社で、これほどグローバルに仕事をしているのは、産業界広しといえどもわれわれが一番ではないかと思っています。

◆加熱による時間短縮、反応の選択肢に広がり

― ありがとうございました。さて今回、新本社へのご移転にともなって、Flash自動精製装置「Isolera」とパラレルペプチド合成装置「Syro」、マイクロウェーブ合成装置「Initiator+」、高速濃縮装置「V10 Touch」を増設あるいは新規導入していただきました。ご検討の経緯を教えてください。

ペプチドリーム株式会社西丸さん :
アライアンスパートナーの数が増えている中で精いっぱい拡張してきたのですが、やはり装置の数が足りないということで、ここに移転してくる際に増設することになりました。「V10」は新機種の「V10 Touch」にしましたが、スピードを重視するとこれ一択だったと思っています。溶剤のDMSO(Dimethyl sulfoxide)を飛ばす機器は他社にもありますが、やはりスピードを考えると「V10」になります。また、「Syro」は長年使い慣れていますし、待ち望んでいたヒーティングブロックが付いたということで、問題なく決まりました。

福田さん :
「Syro」のヒーティングブロックは、使い方がこれまでとほとんど変わらないうえに、できるもののバリエーションが大きく広がりました。やはり、熱をかけた方がカップリングは圧倒的に効率が向上するため、たいへん重宝しています。ものによっては、常温で1時間くらいカップリングしなくてはならない場合もありますが、それが75C°に上げると10分程度になるので、かなり時間短縮に貢献しています。

ペプチドリーム株式会社西丸さん :
一方、「Isolera」については他社機との比較もしましたが、新しく入ってきた人が以前から「Isolera」を使用していたということもあって、そのまま選定させてもらいました。

松井さん :
それに、「Isolera」は省スペースで置きやすいのもいいです。新社屋は広いのでいまは余裕がありますが、コンパクトなのに越したことはないですね。また、オプションのSpektra機能ですが、特定の波長で吸収の弱い化合物があった時に、全波長を常にみているのでそこを逃さないという安心感があります。

― 「Initiator+」は、今回初めてご導入いただきましたが、選定のポイントを教えてください。

松井さん :
マイクロウェーブ加熱は短時間で反応が進みますし、普通の条件でうまくいかないのであれば、いまはすぐに「Initiator+」で試してみるという感じです。こちらに移転してきて、いろいろな反応をやるのにどうしても必要だということで導入しました。

◆新しい人でも使いやすい、堅牢で高い信頼性

― それぞれの装置を使用していて実感するメリットはございますか。まず「Syro」はいかがでしょう。

福田さん :
「Syro」については、先ほども言いましたが、やはりヒーティングブロックが付いたことで、マイクロウェーブ合成機を使用しないと合成困難だった配列のペプチドがSyroでも合成可能になったというメリットがありますね。加熱できるので、「Syro」の方でも難しい合成を担えるようになったということです。条件によってはマイクロウェーブの方が収率が良い場合もありますが、「Syro」はパラレルで一度にたくさんの種類を合成できますので、そこは大きな利点です。

ペプチドリーム株式会社― 「V10」はタッチパネル式になって、使い勝手はいかがでしょうか?

福田さん :
タッチパネルになっても、操作性に大きな違いはないのですが、画面が大きくて見やすいことは確かです。手袋をしたまま使えるので良かったという声は聞いています。

西丸さん :
もともと操作がシンプルですからね。少なくとも、使いにくくなったという声はありません。

― 人を増やしておられるということですが、新しい人が装置に慣れるという点ではいかがですか。

福田さん :
「Syro」は簡単だと思います。使い方もそれほど煩雑ではないので、いちど標準的な操作を覚えてしまえば、すぐに仕事で回していけると思います。数をこなして慣れていくことは必要ですが、導入のしやすさという点では敷居の低い装置ですね。以前使っていた装置では、窒素がリークして土日に止まってしまっているということも しばしば あったのですが、「Syro」は窒素を使わない という点も個人的には 安心です。

― ご評価いただきありがとうございます。「Isolera」も同様なのですが、終了時に自動的に洗浄モードになって、コンタミやバルブの詰まりなどの心配がないようにプログラムされていますので、余計なことに気をつかわなくてすむのがよいという声もいただいています。

西丸さん :
確かに、おおむね操作に関するところだけ説明すればすみますね。あと、「Syro」のシステム自体が堅牢にできているので、壊れるところがないのもメリットだと思っています。

福田さん :
そうですね。「Syro」はかなり丈夫です。

◆装置も進歩が必要、スケールアップも少量多品種対応も

― 最後に、装置の問題点や弊社に対するご要望などがございましたらお聞かせください。

ペプチドリーム株式会社松井さん :
「Isolera」について、他のユーザーレポートの中でも指摘されていますが、2チャンネル化をしていただけるといいなと思います。1台で1サンプルのかたちで、いまでも十分速いですが、やはり同時に2つできればと考えてしまいます。

― 2チャンネル化すると、制御上、片方がトラブルを起こした時には全体が止まってしまいます。そのリスクを避けるための1チャンネル仕様なのですが、ご要望は受け止めさせていただきます。そのほか、いかがですか。

松井さん :
そうですね。カラムの形状ですが、シリカのグラム数が同じでも細くて長いとか、太くて短いとか、形の違うものがあると使い分けしやすいかなと思います。

ペプチドリーム株式会社舛屋さん :
当社の研究はどんどん進んでいるので、装置の方もアップグレードして進歩してくれればと思っています。どうせ増設するなら、どこかしら改良された新機種を用意してもらえた方がうれしいですよね。実際に社内で使って良いと思った装置は、うちの顧客にも推奨しているんです。それで、最近はうちと関係のある企業が「Syro」を購入していると思います。細かい点でもいいので、いろいろとユーザーの要望を取り入れて、新しいものを出していってもらいたいですね。

― なるほど、とても参考になります。現状では、5mLや10mLという反応ブロックを使われることが多いと思いますが、例えば20mLなどのもっと大きなサイズが必要だとか、あるいは検体数をもっと多くしたいとか、方向性としてどんな感じでしょうか。

西丸さん :
そういう意味では両方ですね。大きなスケールでつくる場合も増えてきていますし、それとは別に少量多品種対応をもっと強化してもらいたいと考えています。新しく入れた「SyroⅡ」の方では、2mLブロックを使って48本タイプの多検体合成をやろうと検討していますので、ニーズとしてはやはり両方ということになりますね。ヒーティングブロックも2mL/48本に対応してほしいです。

― いろいろと貴重なご意見ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。本日は長時間ありがとうございました。

 

ペプチドリーム株式会社

インタビュー実施:2017年9月
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導入機関

ペプチドリーム株式会社

URL: https://www.peptidream.com/

東京大学大学院理学系研究科の菅裕明教授が2006年7月に設立。菅裕明氏によって開発されたフレキシザイム(人工リボザイム)を基に開発された独自の創薬開発 プ ラットフォー ムシステ ム である PDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用した新しい医薬品候補物質の研究開発を行っています。革新的な医薬品を創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を開発することで、世界中にいる疾病で苦しむ方々に貢献することを目的としたペプチド医薬のリーディングカンパニーです。2013年6月には東証マザーズに上場し、その後もさらに活躍の分野を拡げておられます。