キッセイ薬品工業株式会社

独創的な新薬開発に
時間の有効化で貢献

~医療用医薬品の新薬開発に
フラッシュ自動精製システム「Isolera」
マイクロウェーブ合成装置「Initiator+ Sixty」
を活用~

キッセイ薬品工業株式会社

キッセイ薬品工業株式会社は、独創的な新薬を研究開発し提供する創薬研究の分野で、バイオタージフラッシュ自動精製システムシリーズ、マイクロウェーブ合成装置シリーズを活用していただいています。今回は、創薬研究部創薬第一研究所副主任研究員の米窪滋さんにお話をうかがいました。

キッセイ薬品工業株式会社─ 本日はお忙しい中、ありがとうございます。
  まず、 御社の研究内容について教えてください。

米窪さん:
弊社の経営ビジョンは、「世界の人びとの健康に貢献できる独創的な医薬品を開発し提供する創薬 研究開発型企業を目指す」というものです。医療用医薬品の新薬を開発し医療の最前線に提供しています。

私たちの部門は、革新的で、有用性、安全性の高い医薬品を世の中に出していく最上流に位置しており、医薬品候補をいかに早く、質の高いものを提案していくかを大きな使命として日々研究を行っています。

特に、現在主力製品を展開している泌尿器、腎・透析、代謝・内分泌、婦人科、眼科の各領域と、新規参入領域である中枢神経系並びにアンメット・メディカル・ニーズ、更にバイオロジクス領域を重点開発領域として取り組んでおります。

弊社は有望な新薬のシーズが世界中で活用されるために、他社との開発連携にも積極的に取り組んでいます。近年では、弊社が創製した痛風・高尿酸血症治療薬候補を米国ファイザー社に導出し、現在共同研究を進めています。また、海外で販売されている高リン血症治療薬をスイスのビフォー社から導入し、国内臨床開発を実施し、最近、国に製造販売承認申請を行いました。こうした自社の強みを生かせる領域で、今後も新薬を目指していきます。

◆時間の有効利用が創薬研究には重要

キッセイ薬品工業株式会社
キッセイ薬品工業株式会社 創薬研究部
創薬第一研究所 米窪滋さん

─ バイオタージ製品を導入いただいておりますが、その経緯を振り返っていただけますか?

米窪さん:
最初の精製装置は「Quad(バイオタージ旧型精製装置)」でしたね。それ以前は手作業によるオープンカラムでした。Quadを導入した当時の利用頻度は、特定の人が使用する程度でした。時代の流れが自動化に向かっていたので、自動化され た「SP1」へと移行し、装置の増設に伴い「Isolera」を導入しています。

現在では、SP1、Isolera Spektraを含むIsoleraシリーズ複数台を使用しています。稼動としてはIsoleraがメインですね。今ではほとんどの研究者が自動精製システムを利用しています。

─ Quad、SP1そしてIsoleraと歴代のシリーズを使っていただいておりますが、どのような点に違いを実感されますか?

米窪さん:
SP1からは操作が簡単になり、フラクション方法も豊富で、時間がかなり効率的に使えるようになりました。そのぶん 空いた時間を化合物デザインなどの発想に使ったり、他の実験の作業が出来たりと、より研究開発のために使うことができるようになり、利用者が増えました。Isoleraでは、グラジエント性能がよくなったと感じています。流速が200mL/minまで上げられる ようになったことも弊社にとっては有益でした。

キッセイ薬品工業株式会社
装置をご使用頂いている研究員のみなさん。
左から キッセイ薬品工業株式会社 創薬研究部 創薬第二研究所 宮城貴史さん、
鈴木皓さん、恩田雄介さん

─ 精製は後処理ですから、時間もコストも掛けられませんよね。

米窪さん:
そうですね。私が入社した頃はオープンカラムで1日に20回程度の精製をする日は、半日以上かけて行っていましたが、今では精製装置を使用することで、2~3 時間程度で出来ます。1本がだいたい5~10分で終わりますので。便利さと効率とで、研究者はみな手作業から精製装置の方に完全移行しますよね。

時間の短縮は研究者にとってはとても重要ですね。準備する時間、精製を実行する時間、チェックする時間、それらが一度に終わります。カラムもパックドカラムを使用しているのですぐ準備ができ、プログラムさえ組めば自動的に精製、フラクションを取ってくれ、同時に検出まで見ることができる。かなりの時間短縮につながっています。

そして溶媒量の削減もとても大切な点です。自動化することで1回あたりの溶媒量も大幅に削減できました。最近では溶媒量の削減は企業にとっては非常に重要です。初期導入コストがどんなに低くても、ランニングコストが高いと意味がありません。限られた予算をランニングコストに費やしていては、本来の研究に必要な予算を圧迫し、より良い技術導入の障害にもなります。研究開発としてそれでは意味がありませんよね。また企業の責任として『環境への負荷を減らす』ということも大事です。短時間で1つの反応の精製が終わり、溶媒量が削減できる点も自動化に移行している重要な点です。

◆“少し無理がきくように 動いてくれること”が重要

キッセイ薬品工業株式会社─ Isolera をファーストチョイスにするというのは、理由などございますか?

米窪さん:
SP1と比較して使っていて品質がいいですね。グラジエント精度も良く、ポンプ自体も流速がより安定で、脈流が少ないです。また、SP1までは出来ませんでしたが、Isoleraではリアルタイムモニターが可能ですので、社内のインターネット経由で自分のパソコンでクロマトを見ることができます。他の作業をしながらたまにモニターを確認して、目的の化合物が出たら装置へ行けばよいのがとても便利です。

弊社の特徴かもしれませんが、研究者の多くが装置に対して『正常でかつ少し無理がきくように動いてくれる』ことを望んでいます。私たちはいつも同じ反応ばかり行っているわけではありません。同じ化合物では特許は取れず、私たちの仕事の意味がないのです。最後は必ず、世界で誰もやったことないものを生みださなければなりません。

そのため、悩んだらやってみて、結果を考察してまたこうしようとやってみるのが日常です。その悩んで試せることが装置にも重要で、『こう変更したら、こうなるんじゃないか?』と思い通り動かせる装置であって欲しいです。そういった面ではIsoleraは非常に良いですね。『この条件でやってみたい』が簡単にできます。今ではIsoleraを“初期設定”で使用している研究者はほとんどいないと思います。経験に基づいて、皆独自にカスタマイズして使用していますので。

─ 昨年弊社から超高流速フラッシュ自動精製ソフトウェア「ACI」がリリースされましたが、御社は無償アップグレードもされておりませんよね?

米窪さん:
そうですね、必要がありませんでしたので(笑)。リリースの前からデフォルト以上の高流速で使用していましたので、正直リリースされて内容を伺ったときもあまり魅力を感じませんでした(笑)。今までに設定した条件をそのまま使用したかったので、アップグレードはお断りいたしました。

─ 御社はどこよりも進んだ使い方をされているということですね。

米窪さん:
そうかもしれませんね(笑)。

─ Isolera Spektra はどのような時に使われますか?

米窪さん:
購入した際には実はあまり期待していない機能だったのですが、導入してみて良さを実感しています。あれは使ってみて初めてわかる機能ですね(笑) 。医薬品も3次元構造など複雑になってきており、UV(紫外線)吸収が弱いものも多くなっています。通常のUVではピークがブロードになっているものでも、Spektraの全波長モニタリングではシャープなピークで検出できるのでフラクションを取るのにとても便利です。次回装置を導入するなら、必ずSpektra機能は付けたいですね。

◆年間新規化合物合成数もアップ 反応時間短縮でマイクロウェーブが貢献

キッセイ薬品工業株式会社
実際にお使いいただいているIsolera Spektra(左)と SP1(右)

─  マイクロウェーブ合成装置Initiator EightとInitiator+ Sixty もご使用頂いてお りますが、マイクロウェーブ合成を始められた当時のことをお話いただけますか?

米窪さん:
マイクロウェーブ自体導入したのは随分前だったのですが、当時学会や論文の発表などでマイクロウェーブの研究が多く報告されていたので、取り入れてみたいなというのはありました。オイルバスで1晩かけてやっていたものが、せいぜい30分や1時間もあればできるというのは魅力でしたね。

導入当初はすぐにみなが飛びついて使用していたわけではなかったのですが、通常の加熱反応でうまくいかない反応がマイクロウェーブを使うとうまくいくことがあったり、試しに使ってみて時間短縮を実感することで、利用者が増えていきました。

─ マイクロウェーブ合成のどういった点に利点を感じておりますか?

米窪さん:
やはり反応時間の短縮でしょうか。通常1晩かけてやっていたものが、1時間程度で終わるのは魅力ですね。10時間かかるとなると「今から反応をかけても明日までかかるな」と思うことも多いのですが、マイクロウェーブなら「今かければ今日中にとれる」と思えるのです。半日以上短縮ですね。

また高温反応をする際には通常DMSO等の高沸点溶媒を使わなければいけなかったのですが、マイクロウェーブではエバポレーターで濃縮できる一般的な溶媒を使って150℃や180℃といった高温反応ができるのも利点です。高沸点溶媒は反応後に除去するのが大変なこともあるので。

そして操作がとても楽です。通常は還流装置を組む必要があり、スペースをとられたり、温度が上がるのを待つ必要があったりと面倒です。それがマイクロウェーブではセットして自動で温度に到達して、反応時間をカウントし、終了してくれるのでとても便利です。今ではみな抵抗なく、当たり前のように反応の選択肢のひとつとして利用しています。同じ反応でも、早く終わるならマイクロウェーブの方が良い、という感じです。研究室としてはほぼ毎日稼動していますね。多いときは1 日中、次の反応が待機していることもありますよ。

─  お使いいただいているInitiator はどちらもオートサンプラーつきですが、どういった活用をされていますか?

米窪さん:
様々な化合物を合成する場合に便利ですね。例えば同じ基質でも置換基を変えた化合物を10種類程度合成することが多いので、そういった場合に10本並べて同じ条件で反応できるのは便利です。セットだけすれば後はオートでどんどん合成ができていますし。

終夜運転で多数の反応を行うことができる点も魅力です。また、会議が入っている場合でも、セットしてその場を離れて、戻って来ると合成できています。導入以降、年間反応数自体も上がっていて年間新規化合物合成数が1.5倍近くまで上がっています。相当時間をうまく使える状況は出来ていると思います。

◆保守サービスによって素早くトラブル回避

キッセイ薬品工業株式会社─ Isolera では、弊社の保守サービスが入っていますが、利用されていかがですか?

米窪さん:
最初からお願いしていたわけではありませんでしたが、保守の内容を聞くとトラブルがあった場合に1 回来てもらった費用と同じくらいでしたので保守をお願いしています。弊社は 装置1台あたりの使用時間が長いため、UVランプなど部品の交換頻度も多くなりますので、保守サービス内容にUVランプ交換も入っている点は魅力的です。非常に使用頻度の高い装置ですので、数日間止まるのは業務への影響がとても大きくなってしまいます。やはりフルパフォーマンスで研究ができることが重要ですので、何かあったらすぐ来てもらえる状況にあるのは良いですよね。結局、加入した方がコストが抑えられています。

来て頂いた際に何かトラブルがあれば一緒にInitiatorも見ていただく場合も多いです。両方ともメーカーが同じというメリットですね。気になるところがあれば来てもらった際に調整していただけるのがうれしいですね。

─ その点は弊社のアピールポイントでもありますね。

米窪さん:
海外のメーカーで、メンテナンスまでしてもらえるのはいいですね。国内に代理店しかないとなると、故障した時に本国へ送って、修理に何ヶ月もかかる場合もあります。海外メーカーであるにもかかわらず、いつも非常に早く対応していただき、とても助かっています。

◆反応状態が見られる装置に期待

キッセイ薬品工業株式会社─ 弊社製品に対する要望があれば、教えてください。

米窪さん:
精製装置に関しては、3溶媒グラジエントができればいいと思いますね。今だと、添加溶媒として3 液目を使用できますが、グラジエントに組み込めると便利です。できないわけではありませんが……比率を計算するのが結構面倒ですね。他社メーカーさんにも聞いてみるのですが、3溶媒グラジエントができる装置はありませんね。このような要望があるのは、弊社くらいかもしれませんが。

─  それだけプロフェッショナルにということですよね。

米窪さん:
どうしても2液だけでは分離が悪い化合物や固まってしまう化合物もありまして。溶解性が悪いために高極性で流すと他の化合物との分離が悪く、そのためやり直して……と時間がかかってしまうこともありますし、実際に何度か溶出中に固まってし まい大変な思いをしたこともあります。3溶媒グラジエントができればやりたいことがもっと出来るようになります。

─ 弊社もさらにフレキシブルな装置を目指しておりますので、そういった点も今後の課題として取り組んでいきたいと思います。 Initiatorの方はいかがでしょうか?

米窪さん:
Initiatorでいえば、反応がどの程度進んでいるかわかればいいな、というのはありますね。例えばMSモニタリングがあ ったりすると、反応が終了したのか、まだ原料が残っているなどがわかって良いと思います。今はキャップを開けてTLCやLC/MSでチェックして、反応がまだ進んでいなければまたキャップして、マイクロウェーブに再度かけて……と行なっていますが、この作業 が省ければよいですね。それほど正確ではなくても良いので、原料消失したかどうか、ノーリアクションかだけでもわかればいいです ね。光を利用して、何かできる方法があればいいと思いますね。

─ 最近そういった要望もお聞きするようになってきました。皆様のご要望にお応えする装置を今後も開発できるよう努力していきま す。本日は長時間誠にありがとうございました。

記事掲載日:2015年4月27日
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導入製品

『フラッシュ自動精製装置 Isolera』

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/isolera_top/

精製に対するケミストの要望を最大限取り入れた、コンパクトなフラッシュ自動精製システムです。Spektra(オプション)では、全波長スペクトルスキャンにより、ベースライン補正ができるだけでなく、より化合物認知を確実に行い、取りこぼしなく化合物を回収します。

『マイクロウェーブ合成装置
Initiator+ Sixty』

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/microwave-synthesis-work-up/initiator60_top/

自動搬送ロボットが搭載されたマイクロウェーブ合成装置です。400Wのシングルモード照射で、パワフルかつ精密に温度を制御します。ロボットにより最大60本のサンプルを連続で反応させることができます。

導入機関

キッセイ薬品工業株式会社

URL: http://www.kissei.co.jp/

キッセイ薬品工業株式会社1946年、長野県松本市に株式会社橘生化学(タチバナセイカガク) 研究所が創設され、1969年には中央研究所が設置され、1990年に安曇野市の現所在地に移転されました。1991年には東証一部上場を果たし、現在の社員数は1600人。全国に12の支店、 46の営業所、アメリカに海外子会社を抱えます。「純良医薬品を通 じて社会に貢献する」「会社構成員を通じて社会に奉仕する」との経営理念のもと、人々の健康に貢献できる独創的新薬の研究開発に挑戦しています。