1分子蛍光計測のための分子プローブ開発の最前線
―中圧精製装置導入で精製ステップが簡便に!―

東京科学大学生命理工学院・川井研究室
東京科学大学生命理工学院・川井研究室

東京科学大学・川井研究室では、蛍光の点滅(blinking)現象を活用した1分子分析・センシング技術の研究を進めておられます。研究室では、蛍光分子プローブ開発を行っており、その合成工程を支えるためにBiotage® Selekt を活用した自動カラム精製を導入しています。今回は、近藤助教、そして学生の田口さん、佐野さんに、研究内容や装置導入の背景、実際の活用方法についてお話をうかがいました。

◆ 1分子蛍光計測が切り拓くケミカルバイオロジー研究

では最初に、研究室全体のテーマを教えていただけますでしょうか。

近藤先生:東京科学大学・生命理工学院の川井研究室では、「分子」、「蛍光」、「1分子計測」をキーワードに、光化学を駆使したケミカルバイオロジー研究に取り組んでいます。特に、生体イメージング、病理臨床検査、分子生物学等の幅広い研究分野で活用されている蛍光分子について、1分子レベルで観測することで初めて明らかになる分子の特徴的な光り方・輝き方(蛍光の点滅=blinking)に注目して研究を進めています。

一般的な蛍光研究では平均的なシグナルを観測することが多い一方、川井研究室では「1分子だからこそ見える光」に着目している点が特徴です。Blinkingを利用することで、生体分子やDNA、タンパク質の構造や状態変化をより詳細に読み出せないかという新しいアプローチに挑戦しています。

 

なるほど。非常に興味深い研究ですね。具体的にはどのように研究を進めておられますか。

近藤先生:私と学生が中心となって、1分子蛍光計測のための蛍光分子プローブ開発に取り組んでいます。光物理特性や蛍光明滅の分子メカニズムを緻密にコントロールする分子設計によって、生体環境やタンパク質等の生体分子との相互作用を1分子レベルでセンシングすることを目指しています。

◆ 分子プローブ設計と精製を支える研究プロセス

では精製操作はその際の合成工程で行われているのですね。

近藤先生:はい、蛍光色素等の有機合成の精製ステップです。各ステップで何かしらの精製工程を挟みながら研究を進めています。分液や再結晶といった操作で十分に純度が得られる場合はその段階で完結しますが、複雑な分子合成ではカラム精製が必要になるケースが多く、最終工程だけでなく各ステップごとにカラム精製を選択肢として取り入れています。

特に構造が近い副生成物が生じやすい反応では、最終工程での分離が難しくなるため、途中段階で一度精製を行います。学生自身が「この条件なら分けられる」という条件を検討し段階ごとに工夫しながら運用しています。

ターゲット化合物の特徴はございますか?色素系だと溶解度に問題がある場合も多いと聞きます。

近藤先生:分子量500程度で一般的によく利用される蛍光色素をベースに分子設計を行っています。最終的には水系の生体環境で使用することを想定しているため、特に溶解性を重視しており、水に溶けやすい分子を選択・設計しています。そのため、現在のところ結晶化による大きな問題はなく、安定して研究を進めることができています。

近藤先生

近藤先生

自動精製装置導入の背景と研究スタイルの変化

装置導入前はどのような方法で精製を実施されていましたか?

近藤先生:実は川井研究室立ち上げ時点からSelektを導入しているので、学生たちは従来のオープンカラムの経験はほとんどありません。

私はオープンカラムの経験はあるのですが、大変な作業でした(笑) 。現在の学生は装置を使った精製が基本となっているため、精製に対するハードルが低く、「失敗してももう一度やればよい」という前向きなマインドセットで取り組めています。今の学生は装置をうまく活用しながら効率的に精製を進めている印象です。

基礎的な知識を踏まえた上で、現在利用できる技術を最大限に活用したいと思っております。

 

なるほど、現在の学生の皆様は装置での精製のほうがなじみのある状況なのですね。ではIsoleraSelektをお知りになった経緯や導入に至った決め手について教えてください。

近藤先生:私の前所属研究室では旧機種のIsoleraが導入されており、その存在は以前から知っていました。先ほどお話ししましたように私自身が学生の頃はオープンカラムで精製を行っていましたが、その後この装置が導入された際には「自動カラムはここまで便利なのか」と大きな衝撃を受けました。さらにアメリカ留学中にもIsoleraが導入されており、自動精製装置が研究現場で広く活用されていることを実感しました。

有機合成において避けることのできないカラム精製について、その作業時間や労力、さらには「精製が大変そうだ」という心理的なハードルを大幅に下げることで、合成スピード全体を向上させ、研究の加速につながると考えています。そのため、後継機種であるSelektの存在を知ったことをきっかけに、研究室への導入を決定しました。

 

ご自身の経験からその便利さをご体験いただけたということで大変うれしく思います。現テーマでの自動精製装置を導入された感想はいかがでしょうか。

近藤先生:我々は分子プローブ合成に取り組んでいるため、できるだけ簡便かつ短時間で目的化合物を得ることが研究上重要です。その点でSelektの導入は大きな効果をもたらしています。Isoleraの時にできたらいいなと思っていた部分が、Selektでは「あれ、できるようになっている」と感じることがありました。例えば精製実行中にリアルタイムで条件変更ができるようになった点や、平衡化の工程のスピードが早くなったことなどに進化を感じています。

装置で確認できる吸収スペクトルが吸光光度計と似たパターンで見ることができることも安心感につながっています。

平衡化に関しては「早くなった!」と多くのユーザーにご評価いただいています。現在のご研究のテーマですと順相も逆相も使用される可能性があると思いますが、それぞれをSelekt 1台で運用されていますか?

近藤先生:現在は基本的に順相カラム精製を中心にSelektを使用しており、化合物によっては逆相精製にも対応しています。使用比率としては順相が約8割、逆相が約2割程度で、逆相は主に数十ミリグラム規模など小スケールで使用しています。またサンプルロードにはSfär Samplet®も活用しています。現時点では、逆相を大規模スケールで使用する予定はありません。

 

逆相精製でのスケールアップも簡便にできますので、その際はお声がけください。では実際に装置を使用していらっしゃる学生の方からのコメントもお願いいたします。

Biotage Selekt

Biotage® Selekt

田口さん(M1):順相・逆相ともに同じくらいの頻度で使用していますが、良く分離できることが多いです。現時点では大きな課題は感じていません。Selektの機能の中では、TLCからの自動グラジエント生成機能をよく使っています。精製時間は、順相(25 gカラム)で10〜15分程度、逆相(12 gカラム)でも30分ほどで完了することが多いです。また、全波長をリアルタイムで確認できる点が非常に面白く、「何が出ているのか」を見ながら飽きずに観察できるのも魅力です。

 

佐野さん(B4):私は主に順相(最大50 gカラム)で使用しています。操作画面が非常にわかりやすく、とても使いやすいと感じています。扱う化合物が比較的小スケールであることが多いのですが、小さなカラムでも分取が簡単でサイズ感も気に入っています。

グラジエント制御(クロマト条件)も問題なく使用できており、過去の履歴を参照して「別の波長の方が分離しやすいのではないか」といった検討ができる点も便利です。また、波長ごとの挙動が見える点は非常に良く、分離過程を直感的に理解できるところが魅力だと感じています。

Biotage® Selektを使う佐野さん
Biotage® Selektを使う佐野さん

貴重なご意見ありがとうございます。学生さんからのポジティブなご意見は我々の励みにもなります。最後に、Biotageへの要望はありますか?

 

近藤先生:現在うまくワークしていると思います。特別な使い方や利用方法は事例として是非ユーザーに共有していただけるとありがたいです。問い合わせ時の対応にも助かっています。

 

近藤先生、田口さん、佐野さん、本日は長時間にわたり貴重なお話をいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

インタビュー実施:2026年05月19日
PDFファイルダウンロード(1.0MB)

導入製品

最新超高速フラッシュ自動精製システム
Biotage® Selekt

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/selekt/

Biotage Selekt

導入企業

東京科学大学 川井研究室
Science Tokyo

東京科学大学 (Science Tokyo) は、東京医科歯科大学と東京工業大学が統合して2024年10月に誕生した国立大学です。「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」をMission に掲げ、両大学のこれまでの伝統と先進性を生かしながら、どの大学もなしえなかった新しい大学の在り方を創出していきます。

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