単純作業から人を解放し、創造的活動を支援

~ バイオマーカー研究に自動サンプル前処理装置「Extrahera」を活用 ~

第一三共株式会社
第一三共株式会社

第一三共株式会社は、薬物動態研究及びバイオマーカー研究のためのサンプル前処理に、バイオタージの新しい自動サンプル前処理装置「Extrahera」を活用しています。昨年設置されたこの機械は国内の第1号機で、一度に多数のサンプルを自動処理できることから、研究の効率化・時間の有効活用にお役立ていただいています。今回は、研究開発本部薬物動態研究所の第1グループ主任研究員の合田竜弥さんを中心に、実際に装置を操作する機会の多い同じグループの副主任研究員である中井直子さん、同じく専門研究員の渡辺恭子さんにお話をうかがいました。

第一三共株式会社― まず、御社について御紹介ください。

合田さん :
2005年に三共と第一製薬が合併して10年が過ぎました。統合当時は、高血圧や感染症、糖尿病、血栓などがメインでしたが、医療ニーズの変化に対応して、がんや循環代謝が中心になっていきました。さらに、今年(2016年)4月に研究所の組織が変わり、がん・免疫、臓器保護、希少疾患、細胞治療、疼痛・神経などのテーマが重点領域となっています。最近はどんな人にでも効くブロックバスター薬ではなく、個別化医療の一歩手前といいますか、患者さんを層別化してそれに合わせて効く薬をつくるという傾向になってきています。

第一三共株式会社
合田竜弥さん

― みなさんのご所属は薬物動態研究所ですね。

合田さん :
2年前、薬物動態研究所の中にバイオマーカー研究に対応するグループがつくられました。それが私たちのグループです。今年4月には、バイオマーカー研究のためのいろいろな測定・分析を中心にする第1グループと、バイオマーカー研究のためのバイオロジー研究を主体とする第2グループに分かれました。

バイオマーカーと一口にいっても、創薬ターゲットとなる薬効を示すバイオマーカーだけでなく、毒性評価のためのバイオマーカー、患者層別化のためのバイオマーカーなどさまざまです。対象も低分子からタンパク質、核酸だったりいろいろであり、まさに分析のニーズ は多様です。ただ、測定法や使用する機器が薬物動態研究と共通なので、この研究所の中にバイオマーカーチームを組み入れることが効率的だと判断されたのだと思います。

◆機械化で時間を有効活用、人に依存せず高い再現性

― Extraheraは第1グループでご使用いただいているのですね?

合田さん :
そうですね。使用を限定していませんから、他のグループで使ってもらってもかまわないのですが、薬物動態研究の探索スクリーニングでは固相抽出までは必要ないようです。ですので、いまのところ、私たちの仕事のような開発後期の化合物やバイオマーカーの測定で使うことがニーズに合っているようですね。

― わかりました。では、Extraheraを導入した理由を教えてください。

第一三共株式会社
中井直子さん

合田さん :
1つはやはり時間の有効活用です。前処理メソッドが決まったあと、大量サンプルを機械で処理することによって、できた時間を有効活用したいということです。2つ目として は、担当者が変わったとしても、再現性の良い結果がいつも安心して得られるということですね。それから3番目は、豊富なアプリケーションノートが用意されていることです。実際に参考になったことも多々ありました。

導入前は、8連や12連ピペットを使っていましたが、手作業はやはり大変ですし、間違いを起こさないようにとても気をつかいます。とくに、開発後期の薬物動態研究では、1日に3~4枚のプレートを処理することもあります。自動化すれば、常に一定で、処理の間違いもありませんので、とても安心感がありますね。

第一三共株式会社
渡辺恭子さん

以前は、探索研究の大量スクリーニング用として大型ロボットも導入されていましたが、かなり大がかりなものでした。それと同じように場所も取る、コストもかかるということでは、私たちの用途ではもてあましてしまいます。その点、Extraheraはコンパクトで操作性も良いところが魅力的だと思いました。ある意味、誰にでも使えますよね。一方で、カスタマイズ可能なエキスパート用の操作画面もあり、いろいろなユーザーニーズに合うところもユーザーフレンドリーだと感じています。

第一三共株式会社

◆会議中も稼働、空き時間がなくなってきた

― ご導入いただいて1年と少しになりますが、ちょうどこの時期に導入の機運が高まっていたということでしょうか。

合田さん :
そうですね。サンプルを効率良く処理したいという基本的なニーズは常にありましたが、実際に手作業は大変だったとはいえ、研究員はそれぞれノウハウがあり慣れていましたので、自動化装置を求める声はそれほど大きくなかったかもしれません。ただ、使ってみればメリットを感じるでしょうし、価格も比較的手ごろで、こういう装置が社内になかったので、じゃあ入れてみようかということになったのです。

渡辺さん :
最近はSLEプレートで静置時間5分とかあったりするじゃないですか。短いようで5分間待つのは長いです。そういう時にExtraheraにかけておくとすごく楽ですし、安心して他の作業ができるようになりました。

合田さん :
人がそんなに多いわけではないので、時間の有効活用は非常に重要です。例えば、午後の時間に1つの前処理の仕事しかできなかったところが、Extraheraに任せることで2つできるようになるならば、これは大きなことだと思いますよ。

― ご評価いただきありがとうございます。あらためて、Extraheraをご使用になってのご感想をお聞かせください。

合田さん :
まず時間の有効活用に関しては期待通りの結果が出ていると思います。メソッドの共有化というメリットもあります。かつては職人技的なところもあったりしましたが、いまはExtraheraを使えば確実に前処理を行うことができ、人によって結果が違うということもありません。あとは、困ったときのアプリケーションノートですね。とても助かっています(笑い)。

渡辺さん :
予定も組みやすくなりました。午後が会議でつぶれて、以前は翌日にまわしたような仕事でも、帰りがけにサンプルをセットしておくなど、効率良く予定が組めます。

合田さん :
そうですね。会議中に自動で前処理しておけば、回収してすぐに測定に入れるので、実験も早く終わります。確かに、Extraheraの使用によって、測定機器自体の空き時間もなくなってきているなというのは実感として感じています。全員が会議に出てしまうと、以前は何も実験ができなくなったわけですが、いまは黙々と装置が動いてくれていますね。

中井さん :
薬液を入れて吸引してという操作は単純作業であり、人がやらなければならないものではないですよね。そこをロボット化するというのはたいへん便利で助かっています。

第一三共株式会社

◆初めてのサンプルは目視確認が必要、アプリケーションノートの充実を

第一三共株式会社― では反対に気になる点はございますか。?

中井さん :
実際の作業では、扱うサンプルによって何となく吸引が良くないとか、少し残ったんじゃないかとか気になることがあると思います。安全を考えると、ドラフトボックスの中に頭を入れるわけにはいかないのですが、やはり目視で確認したいことはあります。中にカメラがあって、モニターにそういう画像が出てくればいいなと思っています。

合田さん :
サンプルによって落ち方にばらつきがありますか ら、すべてきれいに落ちたことがわかるようなセンサーがついていればいいですね。

中井さん :
初めてのサンプルの場合はそこがこわいのです が、逆に詰まらないのがわかっていれば、機械にそのままかけても安心ですので、実際にはそういう確認ずみのメソッドで使うことが多いですね。

合田さん :
こういう機械が前処理のメソッド開発の検討にも 使えればよいとは思いますが、あまり多くを求めてコンパクトさや経済性、ユーザーフレンドリーさがなくなるのも困りますから、これは難しいところですね。

― 最後に、弊社に対してのご要望などはございますか。

合田さん :
そうですね。先ほどもいいましたが、アプリケーションノートにずいぶん助けられていますので、これからもますます充実することを期待しています。

― 長時間ありがとうございました。

インタビュー実施:2016年6月
PDFファイルダウンロード(2MB)

導入製品

自動サンプル前処理装置
Biotage® Extrahera™

URL:
https://www.biotage.co.jp/products_top/sample-preparation-products/extrahera/

コンパクトにデザインされた8チャンネル分注と加圧送液を採用した、全く新しいサンプル前処理装置です。直感的にフレキシブルにサンプル前処理を自動化できます。
揮発性溶媒や表面張力の小さい溶媒も良好にハンドリングでき、標準的な固相抽出(SPE)メソッドで96ウェルプレートを30 分未満で処理します。充実したアプリケーション資料と革新的なサンプル前処理用プレート/カラムとともに、分析前処理のニーズにしっかり応えます。

導入機関

第一三共株式会社

URL: http://www.daiichisankyo.co.jp/

第一三共は、「革新的医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供することで、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを企業理念としています。
1899年に三共商店としてスタートし、1913年に三共株式会社となりました。
一方、1915年にアーセミン商会として創業され、1918年に第一製薬株式会社が発足しています。その後、2005年に両社が合併し、現在の体制となりました。
現在は、国内医薬品事業、グローバル医薬品事業を通じ、医療関係者ならびに、患者さんとそのご家族からの期待に確実にお応えするとともに、未充足の医療ニーズに応える、あるいは治療満足度をさらに上げる高品質な医療品と関連情報 を確実にお届けしています。
設 立:2005年9月
資本金:500億円
職員数:約16000人(第一三共グループ)