中外製薬株式会社 鎌倉研究所 研究本部創薬化学研究部

中外製薬株式会社

『精製の効率化が創薬研究を加速』

~フラッシュ自動精製システム「Isolera」、
マススペクトル検出フラッシュ自動精製システム「Isolera Dalton」などを活用~

中外製薬株式会社

中外製薬株式会社は、人々の命と健康を守るための創薬研究にバイオタージのフラッシュクロマトグラフィー製品群を活用されています。手作業によるオープンカラムから自動化への取り組みの際にバイオタージ製品をご選択いただき、以後、パックドカラムの「Flash+」、自動化されたフラッシュクロマトシステム「Horizon」「SP1」「Isolera」「Isolera Spektra」「Isolera Dalton」と歴代の機器をご使用いただいてきています。
今回は、鎌倉研究所の研究本部創薬化学研究部にご所属の西井広樹さん、兵藤郁美さん、小宮山享さんに自動化の利点などをうかがいました。

中外製薬株式会社
中外製薬株式会社 鎌倉研究所
研究本部創薬化学研究部
西井 広樹さん

─ まず、御社の概要と創薬化学研究部での業務についてお聞かせください。

西井さん:
中外製薬は、『革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献します』というミッションのもと、「がん」「腎」「骨・関節」等の分野を戦略領域と位置付けています。
とくに薬剤の貢献度と患者さんの治療満足度が低い「アンメットメディカルニーズ」領域において、化学合成技術に加えて当社の最大の強みである「バイオ・抗体技術」や「標的分子探索技術」といった最先端技術を駆使しながら、ロシュ・グループの資源を有効に活用することで、国内外において独自性の高い革新的な医薬品の創出に取り組んでいます。

中外製薬研究本部(鎌倉研究所、御殿場研究所)では、低分子創薬に関しては、創薬化学研究部が主体となり、抗がん剤の研究、慢性疾患の薬の研究及び新規な創薬技術開発を行っています。私たちは新薬の創出を目指して日々新しい化合物を探索するのが仕事ですが、より迅速に化合物を取得するために化合物合成プロセスの大きな部分を占める精製の効率化について、優れた方法を常に模索しています。

◆省スペースと効率化を目指して

中外製薬株式会社
中外製薬株式会社 鎌倉研究所
研究本部創薬化学研究部
兵藤 郁美さん

─ 最初にご使用いただいたのは「Flash+」ですが、当時はどのような課題があり「Flash+」を導入されたのでしょうか

兵藤さん:
それまでは送液ポンプを用いてカラムを行っていましたが、機器が大きくスペースを取ってしまう事が問題でした。この点Flash +はセットがコンパクトですし、スピードが速いため効率化も望めるということで、まさにベストマッチでした。

また、環境やコストの観点から溶媒の使用量をできるだけ減らしたいという要望もありました。御社のパックドカラムはドライな状態から使え、分離も非常に良いということで、このニーズにもマッチしていました。

西井さん:
当時、スケールアップが簡単なこともポイントだったと聞いています。GMP対応なので大量合成で使えることも大きかったですね。

兵藤さん:
再現性の良さもポイントです。だれがやっても同じ結果が得られることはすごく大事です。

◆自動化は衝撃的、溶媒量の削減にも成功

中外製薬株式会社
中外製薬株式会社 鎌倉研究所 研究本部創薬化学研究部小宮山 享さん

─ フラッシュシステムの「SP1」で自動化された時の印象はいかがでしたか。

兵藤さん:
衝撃的でした!

小宮山さん:
コンパクトで、しかもタッチパネルですよね。それまでの機器はパソコンが別に付いていて面倒でした。やはりタッチパネルで使いやすくなったという印象が強いです。

兵藤さん:
本当の一体型という感じですよね。また設定した後は、そのまま放っておいてかまわないというのは助かります。最初に導入したのは1台だけでしたが、当時は順番待ちができて、30分くらい待ってでもSP1の方を使いたいということで、みんな待っていましたね。すぐに数台ほしいということになりました。やはり、精製にいちばん時間がかかりますし、かなり精製しにくいものでも1回でしかも自動でできるというのは驚きでした。

小宮山さん:
使う溶媒量もまったく違います。手動で行う場合だとつい溶媒をつくり過ぎてしまうということも多かったです。

兵藤さん:
そうですね。それ以前は、使用する溶媒が足りなくなったら困るのであらかじめ多めにつくって準備していました。SP1からは自動で溶媒も調製してくれるので、ムダがないため溶媒も適量になり、結果として使用量が減りました。

小宮山さん:
他社製品も検討しましたが、バイオタージ製品はわれわれのニーズにかなっていましたので、その後もモデルが新しくなるたびに導入してきました。やはりバイオタージ製品が使いやすいと感じています。

フラッシュ自動精製装置 Isolera
フラッシュ自動精製装置
Isolera

─ 現行機種の「Isolera」も旧型機種の「SP1」と自動精製のコンセプトは同じなのですが、進化した点などを感じていただけましたか。

兵藤さん:
いちばんの違いは、スピードアップですね。SP1は1つの画面が動いているときには他のことができませんが、Isoleraは1つ動かしているときに次の準備ができます。あとは、視覚的に操作できるのですごく使いやすくなりました。

小宮山さん:
私は、溶媒瓶を装置の上に載せられるようになったことが大きいと思っています。よりコンパクトに使えるからです。あとは、流量がSP1だと100mL/minまでだったのがIsoleraは200mL/minまで使えるとか、入力時にタッチパネルに表示されるキーボードも細かな使い勝手が良くなっているとか、SP1で気になっていた細かいところが、すべてIsoleraで解消されたなっていうイメージですね。

オプション追加されたSpektraのλALL機能も、HPLC では当たり前ですが、精製装置でこの機能があると大変便利です。ベースラインも補整されるので、グラジエントをかけても溶媒の影響を受けず化合物が検出できるのは嬉しいですね。

◆未知の化合物の単離に威力、Dalton を優先的に使用

中外製薬株式会社─ 最新機種の「Isolera Dalton」にはご満足いただけていますか。

西井さん:
順相で使える質量分析計(MS)付きの自動精製装置ですからね。ただただ便利の一言です(笑)。精製と分析を同時に行うことができますので、未知の化合物の単離に関してはすごい威力を発揮しています。

小宮山さん:
装置のMS 以外のIsolera部分はそれまで使用していて良さがわかっていましたので、MS 部分がどうかという点が問題でした。普段、MSは逆相で取りますので、順相でも本当にピークがでるのかが不安でした。実際には順相MSでピークがしっかり検出できますし、ここがほしいものだとわかるので、すごく便利ですね。

西井さん:
医薬では、アミンの側鎖など紫外線(UV)でみえないものが多いですから、それがMSで検出できることがメリットです。とくに、新しい化合物の場合、いままでは怪しいピークが入っているところのフラクションを、すべてLC-MS(液体クロマトグラフ質量分析計)を通して確認していたわけです。それをしなくてもいいということが革新的だと思います。

マススペクトル検出 フラッシュ自動精製装置 Isolera Dalton
マススペクトル検出
フラッシュ自動精製装置
Isolera Dalton

兵藤さん:
分析だけの仕事なら、いくつかのピークの中からこれがほしい化合物だと同定するだけで済むかもしれませんが、私たち創薬の仕事はそこで終わりではなく、こっちのピークはなんなのか、そちらの方が効率に優れた薬のタネになるのではないか、と副生成物のこともすべて知りたいわけです。

しかし、それを1つ1つ単離して調べるのは大変です。Daltonは分離しながらMSが検出できるので、化学構造などある程度予想もつきます。その時点でいろいろな発見があります。

─ 目的化合物だけでなく、すべての生成物を分離、確認するのが重要なのですね。

兵藤さん:
現場ではきれいな反応は少ないですからね。スポットが多ければ多いほど分離能がとても重要です。今回、球状シリカで分離能の高い「SNAP Ultra」カートリッジを採用したのもそのためです。なるべく精製には時間をかけたくない、というのが根本にありますので分離能が良く、より多く処理できるのは大変有り難いです。

◆スペースの問題は重要

中外製薬株式会社─ 最近アップグレードされた超高速フラッシュ自動精製ソフトウェア「ACI」は順調に稼働していますでしょうか。

兵藤さん:
流速3 倍で使っていますが、その速さにみんな感動しています。10gのカートリッジだと5~6分で終わりますから本当に速いですし、分離能もまったく変わりません。

─ どの製品も非常に満足してご使用いただいていて、とてもうれしく思います。最後に問題点や要望などはございますか。

西井さん:
そうですね。現在はMSのピークが4つしか表示されません。UVデータと連動してリアルタイムにMSがすべてわかるともっと良いと思います。

中外製薬株式会社─ 他のユーザーからもご要望をいただいている点ですので、なるべく早く反映できるよう開発させていただきます。そのほかにはいかがでしょうか。

小宮山さん:
2Ch.化はされないのでしょうか。いまのバイオタージのラインアップに欠けている部分だと思います。1台で精製を2本同時にできたらやはり便利ですよね。

─ 弊社としては、フラッシュクロマトはパーソナル化の方向にあると考えておりましたが、日本のニーズとして今後の装置開発の参考にさせて頂きます。

兵藤さん:
2Ch.化ができなくてもIsoleraの左右が反転したモデルがあれば良いと思います。そうしたら、2台を省スペースで並べられますよね。

マススペクトル検出フラッシュ自動精製装置 Isolera Dalton西井さん:
スペースの問題は実は非常に重要なんです。環境に気を使っていますから、基本的に順相の場合は精製装置をドラフトボックスの中に設置することになっています。そのスペースに余裕がないんです。Isolera Daltonも例えばの話ですが、機器が安くなるか小さくなるかなら、小型化した方がありがたいです。タテには伸びてもいいですが横幅が小さくなればとても助かります。

─ 小型化はとても重要ですね、こちらもぜひ装置開発の参考にさせて頂きます。今日は、長時間ありがとうございました。

記事掲載日:2014年10月23日
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導入製品

『マススペクトル検出フラッシュ自動精製装置
Isolera Dalton 』

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/flash-purification/isolera_dalton/

マススペクトル検出フラッシュ自動精製装置 Isolera DaltonIsolera Dalton は、マススペクトル検出が可能なフラッシュ自動精製装置です。
ダイレクトインジェクションによる精製前のMS 確認も可能です。順相、逆相のどちらでもMSトリガーによる分取を行なうことができます。

導入機関

中外製薬株式会社

URL: http://www.chugai-pharm.co.jp/

中外製薬株式会社中外製薬は、『革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献します』というミッションのもと、患者さんを最優先に考えて行動しておられます。
医薬品産業を取り巻く環境がますます厳しくなるなか、革新的な医薬品を創出し、世界の医療と人々の健康に貢献していくために、「イノベーション」「人財」「志」の3つのキーワードを念頭に日々挑戦しておられます。

創業:1925年
資本金:72,967百万円
従業員数:6,872名(連結)
本社:東京
※データは2013年12月31日現在