東京大学先端科学技術研究センター菅研究室

東京大学先端科学技術研究センター菅研究室

少量多品種のペプチドを必要量だけ
効率的に合成

東京大学先端科学技術研究センター菅研究室

 

従来までのタンパク質製剤に代わる次世代の薬剤として、非天然型アミノ酸と多様な基本骨格から成る特殊ペプチド医薬が注目されている。無細胞翻訳系で特殊ペプチドを合成するフレキシザイム技術と RAPID 合成技術を開発した東京大学先端科学技術研究センターの菅研究室では、バイオタージのペプチド自動合成装置『SyroI』を導入し、翻訳合成で一次スクリーニングされた特殊ペプチドの化学合成、改変、修飾、アッセイなどに活用している。

◆特殊ペプチドが拓く新しい薬剤探索の可能性

現在、医薬品開発で主流といわれているのは、有機小分子医薬とタンパク(抗体)医薬である。有機小分子医薬には、経口投与が可能で免疫毒性がなく、比較的安価に製造できるメリットがある反面、副作用障害というデメリットがある。また、開発が進められているタンパク医薬には、標的タンパク質が限られていることや高い製造コストが、薬剤としての普及の障害になっている。

その中で、東京大学先端科学技術研究センターの菅 裕明教授は、無細胞翻訳系で非天然型アミノ酸をポリペプチド鎖に組み込むことを可能にした画期的なフレキシザイム技術の応用により、特殊ペブチドを創製するRAPlD合成技術を開発することに成功した。菅研究室では、現在、企業との共同研究でRAPlD合成技術を利用した特殊ペブチド医薬の開発に取り組んでおり、これまで難しかった特殊ペブチドのライブラリー化も飛躍的に進んでいる。

菅教授は「比較的低い分子量をもち生産コストも低い特殊ペプチド医薬が、抗体医薬などタンパク医薬に代わる次世代の薬剤として注目されています。フレキシザイムとRAPlD合成技術を活用した企業との共同研究は、特殊ペプチド医薬開発の飛躍的な発展に貢献できると考えています」と、この技術の果たす役割を強調する。ペプチドの効率的な合成を実現するためのツールとして菅研究室が導入した『Syrol』は、菅研究室と共同研究の企業とで利用している。

◆合成量を柔軟に変更できる点が特殊ペプチドの合成に最適

東京大学先端科学技術研究センター菅研究室「多種多様なペプチドを合成する必要があるため、必要なペプチドを必要な量だけ合成しなければなりません。少量多品種の合成を効率的に行える合成装置が必要でした』と、菅教授は『SyroI』を選択した理由の一つを説明する。特に、RAPlD合成技術で得られた特殊ペプチドは、ある程度までのスケールアップが必要とされ、この場合においても少量多品種を自在なスケールで合成できるペプチド合成装置が必要不可欠だった。

『Syrol』には、2、5、10mlの反応容器が利用できる反応ブロックが標準で装備されている。さらに小スケールのTip合成にも対応している。必要に応じて反応容器を使い分けることで、無駄の少ないぺプチド合成を実現している。必要な量だけを合成することで、環境負荷の低減にも貢献できる。実際に『Syrol』を取り扱っている研究員は、「試薬やランニングソルベントの廃棄量が以前よりも少なくなりました。ランニングコストの削減にもなります」と話す。さらに、「以前、使用していた合成装置では、3年間で100本ほどの合成数でした。『Syrol』を導入してまだ、3カ月ですがすでに合成数は100本を超えました。今後は1カ月の合成数が最大で100本程度まで増加することが予想されていますが、まったく問題ないと安心しています」と、『Syrol』の安定性と堅牢性への信頼感を示す、

少量多品種のペブチドを必要量だけ効率的に合成できる『SyroI』は、特殊ペブチドの合成をはじめとした最先端のペプチド研究に最適なペプチド合成装置であるといえるだろう。

◆使い勝手と丁寧なサポートが快適なペプチド合成を実現している

『Syrol』の操作性について、利用している研究員は「試薬や反応容器のセッティングがスムーズに行えます。制御プログラムも分かりやすく、やりたいことを悩まずにプログラムできます」と、高く評価する。さらに、「計算した試薬量と実際に使用した試薬量がぴったり一致していました。試薬量を少し多めにする、などの運用ノウハウやコツといった部分が少ないことは、装置の使い勝手の面では重要です」と、『Syrol』のピペッティング精度の高さに驚きを隠さない。

『Syrol』のサポート体制について、「オペレーションで分からないことなどは電話で日本語で質問できるのは嬉しいですね」と、利用している研究員はバイオタージの対応を高く評価している。また、『Syrol』の詳細について解説した説明書に加え、バイオタージではユーザーの使いやすさを考えて実際の操作に即した簡易操作マニュアルを準備中である。これによって応用も含めた操作にユーザーが一週間程度で慣れることが可能になる。バイオタージは、『Syrol』の使い勝手をいっそう向上させることで、研究員が本来の業務に集中できる環境の実現をサポートしているのだ。

◆マイクロウェーブ合成で新たな可能性を探る

東京大学先端科学技術研究センター菅研究室『Syrol』には、オプションでマイクロウェーブ合成装置を取り付けることが可能だ。菅研究室の『Syrol』にもマイクロウェーブ合成装置が導入される予定になっている。菅教授は、「非天然型アミノ酸を取り込んだ特殊ペプチド合成は、今後、ますます重要な分野になっていきます。それに対応するためには特殊な配列も効率よく連結することが必要です。マイクロウェーブ合成はペプチド合成の効率化に大きく役立つと期待しています。また、マイクロウェーブ合成によって、従来はできなかった特殊ペブチドの合成が可能になることも予想されます」と、『Syrol』へのマイクロウェーブ合成装置の取り付けに大きな期待を見せる。なお、装置の改造は2009年中に実施される予定である。

バイオタージは『Syrol』を通して、今後も最先端のペプチド合成の現場をしっかりとサポートしていく。

導入製品

『SyroI』

URL: https://www.biotage.co.jp/products_top/peptide-synthesis-purification/syro1/

SyroI『SyroI』製品仕様

  • 1-96検体パラレル自動合成
  • Fmoc固相合成
    (条件によってはBocも可)
  • 1-300μmoleスケール
  • 反応ブロック(24,48 or 96tip)
  • アミノ酸試薬ラック 40本
  • 試薬ボトル5ヶ
  • SyroIソフト&PC
  • MW合成オプション

導入機関

東京大学先端科学技術研究センター 菅研究室
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菅 裕明 教授

菅研究室では、化学的思考と技術を生物学に積極的に取り入れることで、これまで単独領域の思考や技術では解決が困難であった研究課題に挑んでいる。また、サイエンス(科学)とテクノロジー(科学技術)のバランス良い研究を推進することで、新パラダイムを築く科学的知見の獲得や汎用性の高いNEWバイオテクノロジーの開発、創薬にまで繋がる研究を展開している。さらに、研究教育を通して、独創的で国際感覚に溢れた人材の育成も目指している。