大日本住友製薬株式会社 ゲノム科学研究所

大日本住友製薬株式会社 ゲノム科学研究所 ゲノム科学第1研究部 スクリーニンググループ

社内化合物のライブラリー化に
高速ドライアップが貢献しています

大日本住友製薬株式会社
ゲノム科学研究所 ゲノム科学第1研究部
スクリーニンググループ

 

大日本住友製薬では、精神神経領域およびアンメット・メディカル・ニーズが高いスペシャリティ領域で、国際的に通用する独創性の高い創薬に取り組んでいます。同社のゲノム科学研究所では、2008年から『V10 エバポレーションシステム』を導入し、社内化合物溶液のドライアップに活用しています。同研究所の池田雅彦さんと西野文隆さんに、日々の業務で使用している『V10』についてお話しをうかがいました。

◆管理システムの刷新を機に作業の効率化を目指す

池田雅彦さん

――2005年に大日本製薬と住友製薬が合併しましたが、どのような変化があったのでしょうか。

池田:私の所属するゲノム科学第1研究部スクリーニンググループの業務の一つとして、創薬の源となる数10万種の有機低分子化合物(外部購入品も含む)の保管があります。これらの化合物は主にハイスループットスクリーニング(HTS)に用いられますが、常時提出される多数の社内合成化合物を、効率的にライブラリー化していく必要があります。合併を機に、化合物を保管するバイヤルの規格を統一し、バーコードシステムと連携した自動倉庫システムを導入しました。社内合成品は、粉末あるいはDMSO(dimethyl sulfoxide)に溶解させた形でバイヤルに入れて提出されますが、DMSO溶液については安全面を考え、バイヤル内でドライアップして保管することにしました。

◆スクリーニング実験には優れているが、ドライアップが難しいDMSO

――溶媒にはDMSOを使用されていますが、DMSOはスクリーニングに適した溶媒である半面、ドライアップが難しいと聞いています。

池田:HTSでは化合物を水にも油にも溶けやすいDMSOに溶解して使用します。DMSOは、アッセイに使用する細胞や蛋白質への影響が少ない上、揮発しにくいので、マイクロリッター単位の溶液添加も精度よく行うことができ非常に便利な溶媒です。しかし、沸点が189℃と高いため、ドライアップしにくい面がありました。

――『V10』の導入以後はバイヤルで提出された全てのDMSO溶液をドライアップしていると伺っていますが、それ以前は、DMSOのサンプルはどのように処理していたのでしょうか。

西野:通常は粉の状態でサンプルが提出されますが、DMSOに溶けた状態でのサンプル提出数は全体の10‐15%程度あります。DMSOはドライアップが難しいので、保存しておきたいサンプルについては溶液のまま冷凍保管していました。しかし、DMSO溶液は長期間保存すると吸湿が進み品質が劣化してきます。そのような時は、残念ながら廃棄せざるを得ませんでした。

池田雅彦さんと西野文隆さん

◆必要な条件を満たす装置として
『V10』が最適であった

西野文隆さん

――現在、様々なドライアップ装置が存在しますが、どのような理由で『V10』を選択されたのでしょうか。

西野:凍結乾燥や遠心エバポレーターなど、ドライアップには様々な方法がありますが、サンプルは、加熱を最小限に抑えながら、多数のサンプルを効率的に処理していく必要があります。また、所定のバイヤルに溶液が入ったままでドライアップできることも重要な条件です。
池田:サンプルの分解を避けるために加温を短時間で処理する必要があります。凍結乾燥方式であれば温度条件は問題ありませんが、処理に時間がかかり過ぎるので一度に処理できるサンプル数が限られます。45℃付近の温度を保ちながら、短時間でドライアップが行える装置が『V10』なのでした。

◆より多くのサンプルを効率的に処理していく

――現在、どのくらいのサンプルを処理しているのでしょうか。

西野:処理するサンプル数は、多い場合には1日に50サンプル程度を処理する場合があります。V10では1本あたりのドライアップに要する時間が約13分[設定温度46℃、4mLバイヤルにDMSO溶液約2mLを加えた場合の濃縮時間]で、サンプルチェンジャーには一度に16本のサンプルがセットできます。一度サンプルをセットすれば、ドライアップが終了するまで別の作業に取りかかれるので、非常に効率的です。

――これまでに『V10』の故障や不具合などはありましたか。

西野:減圧度が不安定になるトラブルが発生したことがありますが、すぐに対応していただきました。迅速なサポートは、大変に助かります。メンテナンスも、シールの汚れを清掃する程度で、突沸によるサンプルのロスなどはありません。

――今後はどのように『V10』を活用されていく予定ですか。

池田:一層効率的にドライアップするために、サンプルチェンジャーをより大型のものに更新したいと考えています。

――本日はお忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。

池田雅彦さんと西野文隆さん

池田 雅彦 さん(左)

大日本住友製薬株式会社
ゲノム科学研究所 ゲノム科学第1研究部
スクリーニンググループ
主任研究員 薬学博士

西野 文隆 さん(右)

大日本住友製薬株式会社
ゲノム科学研究所 ゲノム科学第1研究部
スクリーニンググループ

導入製品

『V10 高速エバポレーションシステム』

URL:https://www.biotage.co.jp/products_top/evaporation/v10_top/
高速バイヤル回転、加温エアー吹き付け、そして減圧の3種のテクニックを組み合わせることで、従来のロータリーもしくは遠心タイプに比べて最大40倍もの速さでサンプルをエバポレーションします。このユニークなシステムは、沸点200℃付近までの溶液を高速で完璧にエバポレーションします。

V10 高速エバポレーションシステム

導入機関

大日本住友製薬株式会社

人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを企業理念としている。精神神経領域を重点領域とし、アンメット・メディカル・ニーズが高く、高度な専門性が求められるスペシャリティ領域をチャレンジ領域に設定し、革新的な医薬品の創製を目指している。

【設立】 1897年(合併:2005年)
【資本金】 224億円
【従業員数】 4,686名
【本社】大阪市
※データは2010年3月31日現在