テクニカルノート

PS-Triphenylphosphine

 

(ウィッティヒ、光延反応、ハロゲン化アルキル除去)

 

 


【ケミカルデータ】

化学名 Diphenylphosphino-polystyrene
用途 酸およびアルコールの塩素化、ウィッティヒ反応、光延反応、ハロゲン化アルキルの除去
塩素化条件 CCl4(3 h)中酸またはアルコール0.5当量、3時間、還流
光延反応 アルコール1.0当量、フェノール1.5当量、レジン2.2当量 di-tert-butyl azodicarboxylate (DBAD) 1.6当量、室温で16時間
ウィッティヒ反応 イリドレジン2.0当量、sodium bis (dimethylsilyl)amide/tetrahydrofuran(NaHMDS/THF)8.0当量、レジンをTHFで洗浄、続いてTHF中カルボニル化合物1.0当量、室温で16 時間
ハロゲン化アルキル除去 レジン3.0当量、DMF、レジン10 mL/g、20℃、16時間
タイプ 1% 架橋poly(styrene-co-divinylbenzene)
容量 標準ロード2.2 mmol/g、最小ロード1.8 mmol/g(ベンジル臭化物の吸収量に基づく)
ビーズ径 75–150 ミクロン、100-200メッシュ(95%以内)

 

PS-Triphenylphosphineは、トリフェニルホスフィンのレジン担持等価体であるジフェニルホスフィン化ポリスチレンレジンです。レジンの容量はDMF(GC、内部標準法)における臭化ベンジル吸収量の定量によって測定します。本レジンは四塩化炭素中でアルコールまたはカルボン酸を対応する塩化物または酸塩化物に容易に変換することができます(反応式.1)1-3)。反応条件は比較的温和で、生成物は高収率高純度で形成されます(表.1)。

反応式.1 PS-Triphenylphosphineを用いた塩素化

 

反応式.2 PS-Triphenylphosphineを用いた光延反応

 

 

PS-Triphenylphosphineは光延反応でも使用でき、アリルエーテルが良好~優れた収率および高純度で調製されます(反応式.2)4)ここに述べる手順では、面倒なシリカゲル・クロマトグラフィーを行う必要なく高純度の生成物が得られます。過剰なフェノールはMP-Carbonateで除去できます。また、過剰なDBAD (di-tert-butyl azodicarboxylate)ベースのヒドラジド副生成物は、TFAを加え、続いてシリカSPEカートリッジ5)で分離するか、または液液抽出(LLE)を行うことにより除去できます。反応は室温で実施できます。比較研究の結果、過去の推奨事項に反し、窒素による反応混合物のガス除去に大きなメリットはないことが示唆されます6)。しかしながら、担体を加える順序は副生成物を最小限に抑えるうえで重大な意味を持ちます。

 

PS-Triphenylphosphineレジンは、ウィッティヒ反応でオレフィンを合成するためや(反応式.3)7、8)、ハロゲン化アルキルのスカベンジャーとして(反応式.4)使用することもできます。

 

 

 

【一般的な実験手順】

●塩素化(表.1、項目4)
CCl4(1g、8 mL中2.12 mmol)にPS-Triphenylphosphineレジンを添加した懸濁液に、CCl4(152 mg, 2 mL中1 mmol)にピペロニルアルコールを添加した溶液を加えた。反応液を3 時間還流下で加熱し、その後理論収率・純度100%で純粋なpiperonyl chlorideを得るために、溶液を濾過および濃縮した。

 

 表.1 PS-Triphenylphosphineを用いた酸やアルコールの塩素化

アルコール 生成物 単離収率(%) 純度(%)*¹
1

98

95

2

74

64

3

100

100

4

100

100

5

100

100

6

73

9

GC 分析: HP-5 フェニルメチルシリコーンカラム 100-250 ℃, 15 ℃/min, 10 min 保持

未単離

立体障害のある脂肪族第二級アルコールでは反応が遅く、還流下で3時間後の転換率は28%、16時間後で64%の転換率でした。

  同定は 1H NMR

  

●光延反応(表.2、項目3)
PS-Triphenylphosphineレジン(311 mg, 0.66 mmol)の入った反応容器に、p-methoxyphenol溶液(無水THF 1 mL中0.45 mmol)を加えた。懸濁液を5分間静置し、次にDBAD(di-tert-butyl azodicarboxylate)溶液(1 mL、無水THF中0.48 mmol)を加えた。さらにTHF0.5 mlを加え、その溶液を30分間室温で攪拌した。ベンジルアルコール溶液(1 mL、無水THF中0.3 mmol)を加え、反応液を一晩攪拌した。過剰なフェノールをすべて除去するため、MP-Carbonateレジン(274 mg、0.75 mmol)を加えて混合物をさらに2時間攪拌した。混合物を濾過してTHFで洗浄(2 x 2ml)した。この溶液に、TFA/DCM/水(50:48:2)溶液5 mlを加え、その混合物を室温で2時間攪拌した。その後、生成物をMTBEで抽出し、水で洗浄し、MTBE層を濃縮して収率81%および純度100%で生成物を得た。

 

表.2 PS-Triphenylphosphine を用いた光延反応 

アルコール フェノール アリルエーテル 収率

(%)

純度(%)
1

80

100

2

73

98

3

81

100

4

87

97

5

92

100

6

84

100

7

81

100

8

76

100

9

91

96

10

86

100*

11

94

100*

12

92

100*

* 転換率 100%。生成物は加水分解されたアセタール保護基と加水分解されていないアセタール保護基の混合物から成っていました。

  生成物は水性塩基およびMTBEを利用し液液抽出で精製できます。

 

●ウィッティヒ反応(表.3、項目2)
1-Iodobutane(0.53 mL、8.52 mmol)をDMF 30 mLにPS-Triphenylphosphine(3.0g、4.26 mmol)を添加した懸濁液 加え、反応液を65℃で48時間攪拌した。その結果得られたホスホニウムレジンをDMF(4 x 40 ml)、トルエン(4 x 40 ml)、DCM(4 x 40ml)、ジエチルエーテル(4 x 40ml)で洗浄し、真空下で12時間乾燥した。乾燥したホスホニウムレジン(0.2 g、0.2 mmol)を反応容器に加え、続いてTHF(2 ml)を加えた。室温下でホスホニウムレジンの懸濁液にsodium bis(dimethylsilyl)amide(THF中NaHMDS 2.0 M、0.4 mL、0.8 mmol)を加え、反応液を1時間攪拌した。過剰な塩基を除去するためにイリドレジンをTHFで洗浄(5 x 4ml)した。無水THF(2 ml)にイリドレジンを添加した懸濁液に、THF(2 ml)にp-methoxybenzaldehyde(0.2 mL、0.1 mmol)を添加した溶液を加えて16時間攪拌した。反応混合物をヘキサン2 mLで希釈してシリカSPEカートリッジ9に直接アプライし、続いてヘキサン/エーテル(2:1、2 x 4 ml)で洗浄した。溶媒を濃縮して収率94%(GC純度91%)でオレフィンを得た。

 

 

 

反応式.3 PS-Triphenylphosphineを用いたウィッティヒ反応 

 

表.3 PS-Triphenylphosphineを用いたウィッティヒ反応

ホスホニウム カルボニル オレフィン 単離収率(%)

(cis:trans)*¹

GC純度(%)
1

81 (5:1)

   95

2

94 (2:3)

91

3

88 (2:1)

     94

比率は 1H NMR で決定
GC 分析: HP-5 フェニルメチルシリコーンカラム、100-250℃、 15℃/min、 10min保持

  

●ハロゲン化アルキルの除去(表.4、項目2)
PS-Triphenylphosphine(3.0当量)を、DMF(加えたレジン1g当たり10mL)に臭化ベンジル(1.0当量)を添加した溶液に加え、反応液を室温で5~16時間攪拌した。GC分析では、6時間後の除去率>80%、16時間後の除去率100%という結果が得られた。

  

 反応式.4 PS-Triphenylphosphineを用いたアルキルハライドの除去

 

 表.4 PS-Triphenylphosphine (3.0 当量)を用いたアルキルハライドの除去  

Entry Material Scavenged Solvent Temp *C % Scavenged* Time (h)
1 Ethyl bromoacetate DMF 20 100 6
2 Benzyl bromide DMF 20 100 16
3 Cinnamyl chloride THF:DMF 50 100 10
4 Cinnamyl bromide DMF 20 100 16

* GC 分析: HP-5 フェニルメチルシリコーンカラム 100-250℃、 15℃/min、 10min 保持

 

【参考文献】

  1. Relles, H. M.; Schluenz, R.W. J. Am. Chem. Soc. 1974, 96, 6469.
  2. Regen, S. L.; Lee, D. P. J. Org. Chem. 1975, 40, 1669.
  3. Landi, J. J. Jr.; Brinkman, H. R. Synthesis 1992, 1093.
  4. Tunoori, A. R.; Dutta, D.; Georg, G. I. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 8951.
  5. Part Number 440-0200-C.
  6. Vasudevan, A.; Park, D. C.; Wodka, D.; Gentles, R. G. J. Comb. Chem. 2002, 4, 442.
  7. Bernard, M.; Ford, W.T. J. Org. Chem. 1983, 48, 326.
  8. Bolli, M. H.; Ley, S.V. J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1. 1998, 15, 2243.
  9. Part Number 440-0100-C. Compatible Solvents: DMF (3.5 mL/g), THF (4.1 mL/g), DCM (4.9 mL/g), benzene (3.1 mL/g)


【製品番号】

800510 PS-Triphenylphosphine 3 g
800378 PS-Triphenylphosphine 10 g
800379 PS-Triphenylphosphine 25 g
800380 PS-Triphenylphosphine 100 g
800381 PS-Triphenylphosphine 1000 g